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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第23章

第424回

 シャルロットの表情が少しだけくもった。「ナターリア夫人は、あの事件の直前に、自分の親友たちの話をしました。とても美しいブルーの目をした人たちの話を・・・」
 アファナーシイはほほえんだ。「そう、ナターリアとクラリスは、偶然に親友だった。いとこ同士だということを知らずに親友になったそうだ。そして、クラリスの弟と結婚したアレクサンドリーヌも、かの女たちの親友だった。ナターリアとアレクサンドリーヌの夫がいとこ同士、アレクサンドリーヌとナターリアの夫はまたいとこ同士だった。偶然だが、アレクサンドリーヌの娘のシャルロットと、ナターリアの娘のブローニャは、誕生日まで一緒だった。1902年6月28日・・・。またいとこであるきみたちの間には、こんなに偶然がそろった。だから、ナターリアでさえ、自分の娘かそうでないか、自信を持って言えなかったんだろうな・・・」
 シャルロットは何も言わなかった。
「きみは、どうやら、記憶を失ってしまったようだね。ミュラーユリュード時代の記憶をすべて。だとすると、きみは、フランスに行った方が良さそうだ」
 シャルロットは青くなった。「ル=アーヴルには行きたくありません!」
「ル=アーヴルで何があったのか知らないが、大丈夫、ル=アーヴルに行きなさいとはいわないよ。ミュラーユリュードに戻るんだ。その屋敷に戻れば、何か思い出すんじゃないかな?」
「・・・でも、もし、わたしが、シャルロット=ド=ラ=ブリュショルリーでもなかったら・・・?」シャルロットはまだ動揺していた。
「そうだね・・・。それじゃ、きみは、シャルロット=チャルトルィスカのままミュラーユリュードに行けばいいよ」
「そんなことができるんですか?」
「わからない。よく考えてみるよ」彼は考え込みながら答えた。
「それに、わたしは、今、フランスに行く気はありません」
「ナターリアのことで? それなら、心配いらないよ。同じ一族のわたしや、義兄のヤロスワフがいるからね。かの女のことが心配だとすれば、安心していてくれ、と言えるよ。それに、ポニァトフスキーとのごたごただって、そのうち何とかなるだろう」
「でも、ナターリアおばさまは、わたしをかばって・・・」
「気にするんじゃない。かの女は、生きているんだからね」彼が言った。
 そのとき、クルピンスキー医師が入ってきた。彼は、アファナーシイ=ザレスキーに向かって言った。
「・・・病人を疲れさせないで下さいね。お願いします」
 アファナーシイはゆっくりと立ちあがった。そして、二人に短い挨拶をして、部屋から出て行った。
「・・・追い出してしまったかな? そんなつもりじゃなかったのだが・・・」クルピンスキーはドアの方を見ながら言った。そして、シャルロットの方を向き直った。「そうそう、さっき、きみにお客さんが来ていたんだけど、今日は断わったからね。明日また来るって言っていた。楽しみにしているといいね」
 そう言うと、クルピンスキーも出て行った。
 お客さん?・・・シャルロットは考えた。自分を訪ねてくる人なんかいたかしら? でも、今日は、アファナーシイ=ザレスキー氏が訪ねてきてくれた。ひょっとすると、考えてもみなかったような人が訪ねてきてくれるかも知れない。・・・でも、誰なのだろう?
 シャルロットは、クルピンスキーのもったいぶった口調が気になっていた。
 シャルロットは枕元にあった本を手に取った。
 そのとき、ノックの音がした。エドゥワルド=ユリアンスキーが身の回り品を持って来てくれたのだろうと思ってドアの方を見て、シャルロットは思わず真っ赤になった。
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