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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第24章

第438回

 ギュンター=ブレンデルとミエチスワフ=レショフスキー。一見無関係な二人がつながった。ギュンターが<クラコヴィアク>を知っていたのは、ミエチスワフ=レショフスキーがいたからだったのだ。『ヴァイオリニストは本物の芸術家で、ピアニストには作曲の才能がある。それなのに3人で・・・時間を浪費している』とギュンターに言った<ポーランド人の友人>というのは、ミエチスワフ=レショフスキーだったのだ!
「彼---レショフスキーさん---は、<クラコヴィアク>をきちんと友人に伝えなかったのね。あのとき、ギュンターは、かなり偏見を持っていたわ」
「偏見、ねえ・・・」バルバラは、ミエチスワフのことを考えながら言った。「彼がそれを聞いたら、がっかりするでしょうね。少なくても、去年の秋からは、彼は変わったわ」
<去年の秋>・・・。シャルロットは、話題を変えなければならないと思った。クリスティーナ=レショフスカのことは、思い出したくなかった。
「ギュンターは、ミュラーユリュードで勉強していると言っていたわ。あなたもそうなのね?」
「ええ。それに、もちろんミエチスワフもね」
「彼も、この船に乗っているの?」
「ええ。会いたい?」
 シャルロットは首を横に振った。「今、<クラコヴィアク>を思い出したくないの。わかって」
「わかったわ、ブローニャ」バルバラはうなずいた。「話題を変えましょう。わたしは、ミュラーユリュードの学校に戻る予定なんだけど、あなたは、どこへ行こうとしているの?」
「わたしもミュラーユリュードに行くの。そして、足を治したら、グルノーブルでヴァイオリンの勉強をするのよ」
 バルバラは首をかしげた。「でも、ミュラーユリュードに、そんなに有名なお医者さんがいたかしら?」
「わたしね、ブリューノ=マルローという人を訪ねていくのよ。彼のこと、ご存じ?」
「ええ、ドクトゥール=マルローなら聞いたことがあるわ。でも、彼は医者じゃなかったはず。確か、生物学か物理学の博士だったわ」
 シャルロットはびっくりして青くなった。
「クルピンスキー医師は、この足はドクトゥール=マルローにしか治せないって言ったわ。・・・じゃ、わたしの足、このまま一生治らないのかしら?」
 バルバラはとっさに言った。「いいえ。わたしの言い方が悪かったわ。ドクトゥール=マルローは、研究所のリーダーなの。あの研究所には、立派なお医者さんがたくさんいるわ」
「慰めてくれてありがとう。でも、わたしなら、かまわないのよ。このままでもヴァイオリンを弾くのには困らないわ」シャルロットが言った。「チェロは自分では運べないけど、ヴァイオリンなら大丈夫よ」
 バルバラは真面目な口調でこう言った。「わたし、慰めているつもりはないわ。事実を言ったの。あのね、ミュラーユリュードには、とても大きな研究所があるの。昔、町に一人の学者がやってきて研究所を建てたの。初めは、研究者が5人しかいなかったそうだけど、今は優秀な研究者が100人近くいるのよ。だから、もし、リーダーのドクトゥール=マルローが知らないことがあったとしても、それだけの人がいれば、誰か一人くらいはあなたの足のことを知っているはずだわ。そう思わない?」
「わからないわ。でも、わたしは、そこに行かなくちゃならないのよ」シャルロットが答えた。
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