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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第24章

第441回

「あなたは、ブローニャだ。<クラコヴィアク>ファンのぼくを騙すことはできません」ミエチスワフが言った。「あなたは、自分の正体を隠すために、そうやってヴェールをつけているんでしょう?」
「違います」シャルロットが言った。
「違うなら、ヴェールが取れるはずです」
 シャルロットは、ヴェールをちょっとあげた。やけどの跡がちらっと見えるくらいに。
 彼はうろたえたように一歩下がった。「・・・そのやけどは、あのときの事故のものなんですね。あなたは、足を痛めたことは公表したけど、顔のことはわざと伏せたんですね?」
 シャルロットは気を悪くした。「いい加減にしてちょうだい。バーシャは、あなたにそんなことを言うはずはないわ。かの女は、優しいひとよ。あのひとは、わたしがヴェールをあげたとき、泣き出しそうな顔をして謝ったのよ。人を外見だけで見てしまってごめんなさい、って」
 ミエチスワフは、熱い火を目の前に突きつけられた人のような反応を見せた。
「これだけは言っておくわ。もし、あなたの言うことが全部本当だとしたら、ブローニャはとても傷ついているとは思わないの? もちろん、精神的にね。女の子の顔について、あなたにいったい何がわかるって言うの? あなたには、クラコヴィアクのファンだと名乗る資格はないわ。出て行って!」
 彼はすごすごと部屋から出て行った。かの女は、もう練習する気力を失って、ぼんやりと部屋を出た。
 レヴァンドフスキーは、心配そうにかの女の後ろ姿を見送った。
 その日、ミエチスワフはバルバラの部屋に行って、一部始終を話した。
「まあ、あなたったら!」バルバラはぼうぜんとした。
「ぼくには、かの女がどうしてもブローニャだと思えたんだ・・・」ミエチスワフが言った。
「かの女はフランス人よ。直接話したから、わかるでしょう?」
「・・・確かに、あのフランス語は、フランス人の話し方だった・・・」
「かの女は、ケーニヒスベルクで火事にあったの。逃げ遅れて建物から飛び降りたときに、足を痛めたそうよ。あんな顔になった上に、歩けなくなってしまってかわいそうよね。あなたがかの女を怒らせてしまったのは、当たり前だわ。かの女がクラコヴィアクに関係があってもなくても、あのひとにあんなことを言ったのは間違いだわ」
 彼はうなだれた。
「かの女は、フランスに帰るのよ。そして、ミュラーユリュードのドクトゥール=マルローを訪ねるそうよ」
「ドクトゥール=マルローを?」彼は不思議そうに言った。
「ええ。シャルは、ケーニヒスベルクで、あの足を治せる医者として、ドクトゥール=マルローを紹介されたそうよ。でも、彼は医者じゃなかったわよね? わたし、そう教えてあげたのよ。でも、かの女は、とにかく彼に会わなければならないから、ミュラーユリュードに向かうって言っていたわ」
 ミエチスワフは、黙って話を聞いていた。
「あとで、シャルに謝りに行きなさいな。わたしもついていってもかまわないけど」
 ミエチスワフは、首を振り、つぶやいた。
「・・・でも、あの横顔は、ブローニャ=スタニスワフスカだった・・・」
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