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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第25章

第452回

「・・・わたし、あなたをだまそうと思ったわけじゃなかったのよ。ただ、あなたとお友達になりたかっただけ。もし、わたしが、チャルトルィスカ公爵令嬢だと名乗ったら、あなたはわたしを友達にしてくれたかしら? わたしには、そうは思えなかったのよ」
「プランセス=チャルトルィスカ」ガストンが言った。「あなたは、わたしをだましたんじゃありません。せっかくあなたが黙っていようとしていたのに、無理に話させたことはすまないと思っています。でも、もうおしまいですね」
「まだ、終わりじゃないわ!」シャルロットが叫んだ。「少なくても、わたしは、終わりだと思っていないわ」
「いいえ、終わりなんです。プランセス=チャルト・・・」
「シャルロットと呼んでちょうだい、って言ったはずよ」シャルロットは遮った。
「じゃ、シャルロット。わたしたちの間には、壁があるんです」
「ねえ、ガストン、どうしてあなたは、わざわざ壁を見ようとしているの? わたしたち、同じ人間じゃないの? どんな人間の間にも、壁は存在しないわ」シャルロットが言った。「たまたまどんな家に生まれたかというだけで、身分の上下を作るなんて、許されないことじゃないのかしら? わたしたちはみな、平等なはずよね?」
「実際にそうじゃないことは、知っているよね?」ガストンは反論した。
「大人たちが作った間違った慣習に従うの、ガストン? そんなことをしていたら、いつまでたっても壁を壊すことはできないわ。間違っているってわかっているのに、どうして直そうとしないの?」
「そんなことは不可能だからです」
「そんなことはないわ!」
「いいえ、不可能なのです。あなたは豊かで、わたしは貧しい。この現実を突きつけられて、まだ壁を見まいとするのですか?」
「わたしは、目をそらそうと言っているんじゃないわ。壊そうって言っているのよ」
「あまり違いはないですよ。もし、本気でそう考えるのなら、どうしてあなたは、初めからシャルロット=チャルトルィスカだと名乗らなかったのですか?」
 シャルロットは肩をすくめた。「その問いには、あなたがさっき答えたわ」
 ガストンは目をつり上げた。
「わたしが名乗ろうとしたとき、あなたはわたしをプランセス、って呼んだわね?」シャルロットが言った。「もし初めからわたしがそう名乗っていたら、あなたはわたしと、こうやって口論することさえしなかったんじゃないの? あなたにはわたしがわかっていなかったから、たぶん誤解したまま、何も話さなかったんじゃないかしら?」
 シャルロットは、必死にガストンの腕を取った。「ねえ、ガストン、あなた自身はどうなの? わたしと別れてしまいたい?」
「シャルロット・・・」
「世間のことは関係ないわ。あなた自身はどう思っているのか答えて」
 ガストンは思いきって言った。「あなたという友達を失いたくありません」
 シャルロットは真面目な顔で言った。「わたしだって同じよ」
《ガストン! ガストン! 出てこい! どこへ行ったんだ!》廊下で大きな声がした。
 ガストンは青くなって立ちあがった。「しまった! 今、何時ですか?」
「7時15分よ」
「・・・30分の遅刻だ!」
「パンとジャムを取っておいてあげるわ。あとで食べにいらっしゃい」
「はい、シャルロットお嬢さま」ガストンはそう言って、いたずらっぽく笑った。
「まあ、悪い冗談よ」シャルロットは怒ったふりをしていった。
《ガストン=エルスタン! 出てこい!》廊下で声がしていた。
 ガストンとシャルロットはいつもの二人に戻ろうとしていた。しかし、内面ではお互いに傷ついていた。彼らは、友情が以前と同じ形で続くとは思えなかったが、以前のように振る舞おうとしていた。
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