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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第26章

第465回

「・・・どういうこと?」サルヴァドール=クートンは、本当はあまり興味がなかったのだが、訊ねてみた。
「写真を回覧してもいいですか?」コルネリウスがフランソワ=ジュメールに訊ねた。
 フランソワはうなずいた。
「この写真の女の子が、ポーランドから来たプランセス=チャルトルィスカです」コルネリウスが言った。「ですが、古くから研究所にいる人はみな口をそろえてこう言ったそうです。『シュリーさま、ご無事だったのですか?』」
 コルネリウスをよく知るクラスメートは、その言葉に驚いた。シュリー---コルネリウスのいとこのユーフラジー=ド=ラ=ブリュショルリーは、5年前、交通事故で死んだのだ。
「だって、ユーフラジーは、5年前に事故で・・・」サルヴァドールが言いかけた。
「でも、死体は見つからなかった」コルネリウスが言った。「ぼくは、今でも、かの女が生きているって信じている。研究所の人たちも、かの女を見てシュリーだと思ったそうだ。とくに、ディラン夫人とドクトゥール=ダルベールの二人は、最後まで言い張ったそうだ。『でも、あなたは、シュリーさまです』って・・・」
 次に証言台に立ったのは、バルバラ=ヴィエニャフスカだった。
「この写真の人物は、あなたが知っている女性ですか?」サルヴァドールが訊ねた。
 バルバラは答えなかった。
「・・・この女性の名前は、何ですか?」サルヴァドールは質問を変えた。
「シャルロット=コリエです」バルバラが答えた。
「間違いありませんか?」
「かの女は、船でそう自己紹介しました」バルバラが答えた。「自分は、ケーニヒスベルクから来たシャルロット=コリエだ、と」
「かの女のこと、もう少し詳しく話して下さい」
 バルバラは、ミエチスワフの方を見た。それから、サルヴァドールに目を移した。「かの女は、ケーニヒスベルクの屋敷で火事に遭い、すべてをなくしました。家も、家族も、そして・・・そして、かの女は、命だけは助かったのです。でも、かの女の顔にはやけどの跡が残り、それ以来、かの女はヴェールをつけ、人前では決してヴェールをあげないようになりました」
 ミエチスワフがうなずいた。
「そればかりではなく、かの女は下半身の機能を失いました。かの女の主治医は、フランスに行けば歩けるようになるだろうと言って、親友のブリューノ=マルローに紹介状を書いたそうです。かの女は、その言葉を信じ、単身フランスへやってきました」バルバラが言った。「かの女は、優秀なチェリストでした。船の中で何度か演奏会を開き、人々は・・・」
 そのとき、まわってきた写真を見たウラジーミル=ミチューリンが思わずこう言った。
「この写真の女の子には、やけどの跡なんかないじゃないか」
 クラスメートの目は、全員、ウラジーミルの方に向いた。
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