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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第26章

第466回

 バルバラは、その言葉を聞くと真っ青になった。
「かの女の顔には、確かにやけどの跡があった!」ミエチスワフが口を開いた。
「証言台に立っていない人がしゃべっちゃいけないよ!」誰かがヤジを飛ばした。
 ミエチスワフは真っ赤になって黙った。
「・・・どういうこと・・・?」サルヴァドールは首をかしげた。
 バルバラは真っ青になってふるえていた。
「シャルロット=コリエは、シャルロット=チャルトルィスカじゃないの?」サルヴァドールは質問を変えてみた。
 返事はなかった。
「裁判長、ミエチスワフ=レショフスキーを証言台に呼んでもいいでしょうか?」サルヴァドールがフランソワに訊ねた。
「・・・許可します」フランソワは威厳ある口調で答えた。
 ミエチスワフは証言台に立った。
「シャルロット=コリエについて、もう少し詳しく聞いてもいいでしょうか?」サルヴァドールが言った。
「ぼくは、あの子について、そんなによくは知らないのです。ぼくの話には、推測が入りますが、それでもよろしいですか?」ミエチスワフが言った。
「推測は、真実に近いこともあります」フランソワが言った。「ただ、真実かどうかを判断するのは、あなたではありません」
 ミエチスワフは話し出した。「シャルロット=コリエは、すばらしいチェリストでした。詳しいことは、マドモワゼル=ヴィエニャフスカがさっき話したとおりです。かの女は、船にいる間中、ヴェールをつけて生活していました。ただ、ぼくは、かの女がヴェールをあげないのには、ほかの理由があると思っていました」
「ほかの理由?」
「ええ。かの女がヴェールをあげないのは、かの女が自分の正体を知られることを恐れていたからだと思いました」
「正体、とは?」
「かの女は、ブロニスワヴァ=スタニスワフスカだったのではないか・・・」ミエチスワフがそう言いかけたとき、二人の少年が声を上げた。
 その名前を聞いて、ギュンター=ブレンデルが青くなった。
 もう一人、記録を取っていたロジェ=ガリュベールは手をあげていた。「・・・その名前、もう一度言ってもらえない? どう綴るの?」
 ギュンター=ブレンデルは、ガリュベールの隣に座り、ノートの空白に綴りを書いた。
「・・・どうして知っているの?」ガリュベールが訊ねた。
「その名前の女性と、以前、会ったことがあるんでね・・・」ギュンターがささやいた。
 ミエチスワフは、二人をにらみつけてから、話を続けた。「ブロニスワヴァ=スタニスワフスカという少女は、<クラコヴィアク>のメンバーで・・・」
 ガリュベールはちょっと大きな声でギュンターに言った。「それ、どう綴るの?」
 ギュンターが書いているとき、ミエチスワフはちょっと大きな声で二人に注意した。
「きみたち、話の邪魔をしないでくれないかな?」ミエチスワフはむっとしてそう言うと、話を戻した。「とにかく、<クラコヴィアクのブローニャ>といえば---アンシクロペディー、黙って綴りを教えてあげてくれ---ポーランドでは有名な音楽家だったんでね、かの女は、あの事件で自分の顔があんなふうになってしまったことを・・・」
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