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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第27章

第493回

 ダルベールは、そこまで話すと、シャルロットの目をのぞき込むようにじっと見つめた。「ところが、ポーランドからやってきたあなたは、亡くなったユーフラジーお嬢さまにそっくりでした。名前も同じシャルロット・・・。マディさんは、あなたを見て、ユーフラジーお嬢さまだと確信したようです」
「でも、わたしは、あのとき、ちいさい頃のことは何も覚えていなかった・・・」
「かの女は、あなたの反応を見て、がっかりしました。この女の子は、間違いなく自分を知らない・・・かの女はそれを認めざるをえませんでした。わたしもそう思いました。あなたは、どこからみても外国から来たお嬢さまでした。そう・・・今のあなたとは、話し方がまるで違いました」ダルベールはそう言った。シャルロットは目をそらさなかった。「でも、今のあなたは、あのときと話し方が違います。今のあなたの話し方は・・・ちいさい頃のシュリーさまの話し方です。わたしは、かの女の話し方の癖をよく覚えています・・・」
 マルローは初めて口を開いた。
「わたしは、友人のクルピンスキーからの手紙を受け取りました」マルローはそう言いながらシャルロットを見た。そして、クルピンスキーの名にも反応がないことを確認して続けた。「彼は、わたしならあなたの足を治せると思ったようです。そこまで信じてもらうとは光栄なことですが、わたしは、ずっと医学から離れている。わたしは、自分よりはマルセイユにいる友人---スタニスラス=ルフェーブルにまかせようと決めたのです。それを聞くと、ディラン氏は、自分たちがマルセイユに里帰りするチャンスが来たことを知り、喜んだのです」
「それなのに・・・」シャルロットは下を向いた。
「皮肉なものですね。あなたは、事故で、ポーランド時代の記憶を失い、その前の子ども時代を思い出すとはね」マルローが言った。「でも、あなたの、その記憶が本物であるかどうか、わたしたちは試さなければなりません。いいですね?」
 シャルロットはうなずいた。
「でも、どうやって?」ダルベールはマルローに訊ねた。
「簡単ですよ。本物のシュリーさましか知らないことがいくつもあるはずです」マルローがダルベールに言った。そして、彼はシャルロットの方を見た。「たとえば、あなたは、この部屋の秘密をご存じでしょう?」
 シャルロットはちょっと考えてから答えた。「たとえば・・・ファイルが入っている金庫のナンバー?」
「ええ。そのナンバーは、あなたとドクトゥールだけの秘密でした。そう、彼は、お嬢さまにだけはそのナンバーを教えたのです」マルローが言った。
 ダルベールの目も輝いた。「あなたは、そのナンバーをご存じなんですね?」
「ええ、知っています」シャルロットが答えた。「そのナンバーの初めの8桁は、ここの住所です」
「・・・初めの8桁?」ダルベールは目を丸くした。
「ええ。ペール=トニィは、その続きは誰にも教えるなと言いました」シャルロットが答えた。
「・・・ああ、やはり続きがあったんですね!」ダルベールがつぶやいた。
 マルローとダルベールは、ドクトゥール亡き後、金庫を開けることができなかった。彼らは、金庫のナンバーが8桁だと思いこんでいた。ここの住所、というキーワードも知っていた。だから、彼らはなぜ金庫が開かないのかずっと不審に思っていたのである。
「そこまで知っているのなら、開けられるはずですね」マルローも言った。
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