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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第1章

第5回

 フランソワーズは、自分が救われたその教会で、同じように困窮している少女と出会い、人ごととは思えなかったのである。かの女は、メランベルジェに救われたように、今度は自分が誰かを救わなければならないと思った。
 ところが、クラリスと一緒にいると、救われたのは自分ではないか・・・という気がしてくることを不思議に思った。なぜなのだろうか、と考えたが、最後に行き着く答えは、あのブルーの瞳である。あの目で見つめられると、すべてを受け入れてもらえる不思議な気分になるのである。フランソワーズは、子どもらしからぬところがある女の子を気に入っていた。クラリスと暮らしていなかったころのことなど、もう思い出せないくらいであった。アレクサンドルはかの女の生きるささえだったが、クラリスは生きる希望であった。
 フランソワーズがさらに驚いたのは、女の子の才能である。
 最初に出会ったとき、クラリスは、メランベルジェの即興演奏のテーマを口ずさんでいた。
 もちろん、それまでにそのテーマを聞いたことがあるはずはなかった。なぜならば、そのテーマは、その日、フランソワーズが師に言われて即興で作ったものだったからである。
 メランベルジェ氏は、教会のオルガニストであった。昔は音楽院で教えていたこともあったのだが、定年で引退した後は、教会にこもってオルガンを弾いていた。未だに弟子になりたいという若者たちに囲まれ、充実した生活を送っていた。ただし、弟子になりたい青年たちは、オルガニストとしての彼にあこがれてやってくるのではなく、作曲家としての彼に弟子入りしたくてやってくるのである。
 夫より約20年下のメランベルジェ夫人は、音楽院で現役のピアノ教師であった。フランソワーズの作曲の才能を見いだしたのも、このメランベルジェ夫人である。ただし、夫人は、自分の夫をかの女の師として紹介したことはなかった。フランソワーズのほうも、メランベルジェ氏に弟子入りするつもりはまったくと言ってなかったのである。
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