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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第27章

第496回

 シャルロットは、二人の所長代理たちから今後のことを聞かれたとき、こう答えた。
「わたしは、グルノーブルでヴァイオリンの勉強をするためにフランスに来ました。でも、もう少しここにいたいと思います。できれば、サント=ヴェロニック校に行きたいと思うんですが・・・」
「でも、足のことは・・・?」ドクトゥール=マルローが訊ねた。
「わたしは、あなた以外の医者にかかるつもりはありません、ドクトゥール=マルロー」シャルロットがそう言うと、マルローは思わず赤くなった。「あなたが治らないと言うのなら、誰にも治せるはずがありません」
「・・・わたしは、思うんです」マルローが言った。「あなたの足は、自然に治るものなのではないか・・・と。時間さえかければ、感覚が戻るのではないでしょうか? 現に、事故当時よりは感覚が戻ってきているんでしょう?」
 シャルロットはうなずいた。
「あなたは、歩いたそうですね。スール=コラリィから聞きました」マルローが続けた。「それならば、訓練次第で、もっと歩けるようになるでしょう。無理に手術をする必要はないのかも知れません」
「それなら、なおさら、マルセイユに行くつもりはないわ」シャルロットはほほえんだ。「ただ、サント=ヴェロニック校のほうが、足が不自由な生徒を受け入れるつもりがない、というなら別だけど・・・」
 サント=ヴェロニック校の校長は、柔軟すぎるくらいの考え方を持つ人間だった。彼は、シャルロットの足が不自由なこと自体は問題にしなかった。
「・・・ただ、これまで、車椅子の生徒を受け入れたことがないので、車椅子で生活するには不便な施設であることは確かです。できれば、松葉杖で歩けるようになるまで、編入試験を受けない方がいいと思いますが・・・」という返事であった。
 シャルロットとドクトゥール=マルローは、松葉杖による歩行訓練を始めることにした。その訓練には、研究所の若い医者たちも協力した。あまり長い時間歩くことは無理だったが、<歩ける>ようになったシャルロットは、サント=ヴェロニック校の編入試験を受けた。
 編入試験の成績は、全教科ほぼ満点、というものだった。ピアノとヴァイオリンの成績もまずまずだった。校長は、その結果について、シャルロットと面接した。
「あなたのこの成績は、このまま大学に行っても通用する学力です。ですから、最上級生のクラスに入り、来年の夏に卒業したらいかがでしょう?」校長が言った。「あなたは、きっと、最優秀生徒として記念の懐中時計を手にすることになるでしょう。そして、サント=セシール奨学金をもらって、グルノーブル音楽院に行くことになるんじゃないかしら? それだけの勲章があれば、サヴェルネ教授も、きっと喜びますよ」
 シャルロットは思わず赤くなった。「わたしは・・・確かに、サヴェルネ教授のもとに行くと約束しました。ですが、卒業資格はいりません。足が治るまで置いていただければ、それだけで満足です。ですから、あまり年上の人たちと勉強したくはありません・・・。あまり年が近い人とでは学力が違いすぎるでしょうから、2~3年生くらいの人たちと一緒ではいかがでしょうか?」
 校長はほほえんだ。「では、2年生に。2年7組に、わたしの孫がいます。あなたと一緒なら、かの女もきっといい刺激を受けることでしょう・・・」
 こうして、シャルロットは、2年生に編入されることが決まった。
 そのクラスは、奇しくも、コルネリウス=ド=ヴェルクルーズのいるクラスであった。
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