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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第28章

第501回

「あなたが、新任のド=グーロワール先生でしたね?」校長室で、ド=ラグランジュが言った。
「はい」
「さっそく、あなたには、自分のクラスを見ていただきましょう。2年7組です。わたしがついていった方がいいですか?」
「いいえ、一人で行きます」
 校長の隣に立っていたサン=ティレールは、自己紹介の後で言った。「われわれが求めているのは、あなたのその若さです。このくらい若ければ、情熱を持ってあのクラスとぶつかっていけるでしょうね」
「あなたを見たとき、あなたならあのクラスにふさわしい人物だ、と思ったんです。それで、あなたを採用したんですよ」ド=ラグランジュはそっとほほえんだ。「じゃ、早速行って下さい。あと、細々したことは、エマニュエル=テリエにでも聞いて下さい。彼なら、サント=ヴェロニック校については、誰よりも詳しいですからね。それに、もう一つ・・・」
 ド=ラグランジュは、ドアの方を指さした。「廊下に女の子がいます。ちいさい子ですが、今度2年7組に編入が決まりました。シャルロット=チャルトルィスカ。名前からおわかりの通り、ポーランド人です」
 グーロワールは廊下に出た。そして、松葉杖をついて立っていたシャルロットの姿を見かけ、はっとした。かの女は、間違いなくル=アーヴルの駅でヴァイオリンを弾いたあの車椅子の少女だった。彼は、再会を喜んで声をかけた。
「やあ!」
 しかし、シャルロットは、彼に向かって、まるで初めて会った人のようによそよそしく頭を下げただけだった。彼は、仕方なく、こう言った。
「あなたとは、前にお会いしたことがありますよね?」
「・・・事故に遭う前でしょうか?」シャルロットが訊ねた。
「事故ですって?」
 シャルロットは悲しそうにほほえんだ。「わたし、9月12日以前のことを何も覚えていないんです」
 彼は絶句した。今、目の前にいるのは、確かにあのときの少女だった。しかし、全くの別人のように雰囲気が違っていた。あのときの少女は、明らかに外国から来たという雰囲気だった。しかし、この少女は、紛れもなく純粋のフランス人の話し方をしている。彼はそれを不思議に思った。
「ぼくは、アルフレッド=ド=グーロワール。ポーランド生まれのフランス人で、ポーランド語とドイツ語とフランス語が話せる」
「わたしは、フランス語も満足にはできません。ポーランド人だというのに、ポーランド語はほとんど思い出せません」
「ぼくはまだ若いけど、十分きみを助けていけると思う。困ったことがあったら、いつでも言って欲しいな」彼は優しい口調で言った。
 シャルロットは、何となく彼が信用できるような気がした。「ありがとうございます」
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