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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第28章

第503回

「ところで、きみたちは、何をしているの?」ド=グーロワールは、本来の彼の話し方に戻って訊ねた。
「見ればわかるでしょ? フランス語の授業ですよ」教壇に立っていた少年が答えた。「ぼくたちは、先生が休んでいるときには、こうやって勉強するんですよ。今月のテーマはこれです。この講座は、これで3回目です」
「で、きみの名前は?」
「サルヴァドール=クートン、通称ムッシュー=ラタン。あなたは?」
 ド=グーロワールは、黒板に向かって歩き出した。そして、サルヴァドールの手からチョークを受け取り、自分の名前を書いた。

アルフレッド=ルーディ=タンスキー=ド=グーロワール 1886.6.25~

 サルヴァドール=クートンは、グーロワールの手からもう一度チョークを取り、<1986.6.25>と書き加えてから席に戻った。
「・・・いや、1918年の間違いだろう?」最前列から声がした。
 その声を聞き、ド=グーロワールは、黒板から生徒たちの方に視線を戻した。「・・・誰だ?」
「ロッシです。ジョヴァンニ=ロッシ」誰かが言った。「クラスの予言者と言われていますが、あたりませんよ」
「いいえ、これは当たります」最前列の少年が言った。彼は目を閉じていた。そして、抑揚がほとんどないフランス語で言った。「戦争が起こります・・・大きな戦争・・・それは、世界戦争です」
「ハルマゲドンかい?」誰かが冷やかした。
 ロッシは目を開けて振り返り、声の主をにらんだ。「アンシャン、これは冗談じゃないんだよ。人が死ぬんだから」
 アンシャンと呼ばれたフランソワ=ジュメールは思わず立ちあがって抗議した。「人の死を軽々しく予言なんかするんじゃない! しかも、会ったばかりの人に対して。あやまれよ、偽予言者!」
 ド=グーロワールは、自分の恐怖がこの少年に見抜かれたのを知って恐くなっていた。彼は、この雰囲気を冗談でごまかすしかないと思った。
「・・・あ、そうだ。一人、新しい仲間を連れてきていたんだった。おいで、こっちに来て自己紹介しなさい」
 シャルロットが入ってきたのを見て、全員驚いた。かの女が口を開きかけたとき、一番後ろにいた少年が言った。
「その必要はありませんよ。ぼくたちは、かの女以上にかの女のことを知っています。このひとは、プランセス=チャルトルィスカ。ポーランドから来た新しい友人です」
 そう言いながら、少年は一番前まで進み出て、シャルロットに握手を求めた。
「ぼくの名前はアルカンジュ=ガブリエル=ラファエル=エレミエル=セラファン=サブリエル=エマニュエル=ウリエル=ラグエル=ベルリオーズ、長い名前なので、たいていの人は一度では覚えられないので、アグレスールと呼んで欲しい。このクラスのリーダーです。よろしく」
 シャルロットは、慎重につえを固定してから彼の手を握りかえした。
 アグレスールは、ド=グーロワールに言った。「かの女は、事故で記憶を失ってしまったんです。そして、ぼくたちは、その事故で、担任を失いました・・・」
 ド=グーロワールは絶句した。
「今日、ぼくたちは、新しい担任と、新しいクラスメートを迎えることになりました」アグレスールはにっこりして、自分から手をさしだした。「よろしくお願いします、ド=グーロワール先生」
 彼は、出された手を握りかえした。
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