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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第28章

第518回

「どうやって?」シャルロットが訊ねた。
「その年は、偶然、シャッフル---というのは、ソサイエティの各パートの一番奏者が全員退団して、団員が総入れ替えになることだ---が行われた。そのとき、ドランドは、第一ヴァイオリンのコルネリウス=ド=ヴェルクルーズ、第二ヴァイオリンのニコラ=ジュヴェ、ヴィオラのドニ=フェリー、チェロのイジドール=アルノー、コントラバスのアンソニー=クラウス・・・といった具合に、オーケストラに反感を持つ連中を一番奏者にしてしまったんだ。やがて、チェリストグループが反乱を起こした。そして、イジドール=アルノーを中心とした4人組が辞めていったんだ。この4人のクーデターは有名でね、4人は今<ドニ=フェリー=カルテット>なんて名乗って活躍しているよ」
「でも、ドニ=フェリーって、確か・・・」
「普通、カルテットのリーダーは、第一ヴァイオリン奏者だよね?」フランソワがほほえんだ。「彼らが、<ニコラ=ジュヴェ=カルテット>と名乗らないことこそ、彼ら一流の皮肉さ。だいたい、彼らは普通のカルテットじゃないからね」
 シャルロットもほほえんだ。
「で、彼らのクーデターが失敗したあとで、当時4年2組だった無名のヒーロー、アグレスール=ベルリオーズが3つのグループを一つにしたらクーデターが成功するんじゃないのかって考えたんだ。彼は、まず作曲家グループのフランソワ=フランショームに声をかけた。そして、チェリストグループに。しかし、4年7組のメンバーに一番最後に声をかけようとしたのだけど、チェリストグループがコルネリウス=ド=ヴェルクルーズを嫌っていたので、彼らとは仲良くなれなかったのさ。そういうわけで、新しいグループには、ソサイエティのメンバーが少ない。メンバーの三分の一と言ったところか。しかし、ラザール=ドランドはずる賢い。だから、13人は、正体がばれるのを恐れているんだ」
「ラザール=ドランドは、ネロみたいな人なの?」
「・・・かも知れない。そうでないかも知れない。わかっているのは、彼はいわば小ネロで、その親分の大ネロがいるということだ」
「大ネロ?」
「ジルベール=サン=ティレールだ」
「・・・あなたがたが本当に戦おうとしている相手は、大ネロね?」
「そうだ」フランソワが言った。「けど、大きすぎて手も足も出ないんだ。もちろん、ラザール=ドランドだって取るに足らない相手じゃなかった・・・。だから、イジドール=アルノーのクーデターも失敗したし、ほかのグループのレジスタンスも成功しなかったんだよ」
「でも、あなたがたは、もう失敗しないわね?」
「したくないね」フランソワが答えた。
「もしかすると、クーデターは近いんじゃない?」
「そうだよ。クーデターは近づいている。計画は大詰めに入っている。あとは、きっかけさえあれば、いつでもクーデターを起こすことができる」
「きっかけ?」
「そう。大義名分」
 シャルロットは思わずふるえた。「ムッシュー=ジュメール、あなたはどうしてそんなことまで教えてくれるの?」
「きみに身動きが取れないようにすることが理由の一つ。もう一つは、きみを信頼しているからだ」
「・・・信頼があとなのね。でも、身動きが取れないように、って?」
「ぼくがきみを信じている、って言えば、きみはぼくを裏切ったりはしないだろう? きみは、そういうひとに見える。それに、知りすぎると、かえって何もできないものだ」フランソワはそう言うと、またほほえみを浮かべた。「・・・ぼくたちは、もう友達じゃないか。ほかのクラスメートのように、アンシャンと呼んで欲しいな」
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