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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第31章

第554回

 ドクトゥール=アースは、研究室に戻るなり不機嫌な顔になった。彼は、シャルロットにぶっきらぼうな口調で言った。
「どうして、あんなになるまで、放っておいたのですか?」
 シャルロットは涙を拭いて答えた。「・・・わたしには、よくわかりません。初めて彼に会ったとき、ああ、これは重い心臓病だと思って、ここに来るように勧めたんです」
 その返事を聞くと、彼は驚いた。
「あなたは、彼の友達?」
「ええ、そうです」シャルロットが答えた。
「わたしは、てっきり、彼の妹だとばかり・・・」
 ドクトゥール=マルローが友人に言った。「この方は、わたしたちの被保護者のシャルロット=チャルトルィスカ嬢です」
「シャルロット=チャルト・・・?」ドクトゥール=アースは首をかしげた。
「ドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリーのいとこの娘さんです。タデー=クルピンスキーから預かったお嬢さんです」ドクトゥール=マルローが友人に説明した。
「タデー=クルピンスキーだって・・・?」ドクトゥール=アースは驚いたように言った。「・・・いや、待てよ・・・このお嬢さんには、どこかで会ったことがあるような気がしているんだが・・・?」
「わたし、シャルロット=コリエです。覚えていらっしゃいますか?」シャルロットが口をはさんだ。
 ドクトゥール=アースはあぜんとした。
「まさか・・・イアサントの・・・記憶喪失の・・・?」
 シャルロットはうなずいた。
「ほんのひと月前まで・・・車椅子に乗ってぼんやりしていた・・・あのときの・・・?」
 シャルロットはもう一度うなずいた。
「歩けるの? ブリューノに手術してもらったの?」
 今度は、シャルロットとドクトゥール=マルローはほとんど同時に首を横に振った。
「じゃ、どうやって・・・?」彼は驚いた。
 ドクトゥール=マルローはにやりとした。「奇跡が起こったんですよ」
 ドクトゥール=アースは、怪訝そうな顔をした。「奇跡、ねえ・・・。きみがそんな言葉を使うとはね、ブリューノ」
「《医学には、奇跡や偶然はない》・・・かね?」ドクトゥール=マルローはほほえんでいた。「今のわたしは、医者じゃないからね、許してくれるだろう?」
 ドクトゥール=アースは、友人とシャルロットとをかわるがわる見た。
 仕方なく、ドクトゥール=マルローは咳払いをした。
「さて、きみは、奇跡を起こせるかな、ミシェル?」
 ドクトゥール=アースは、ため息をついた。「わたしは、医者だからね、ブリューノ・・・」
 その言葉を聞くと、ドクトゥール=マルローはもう一度にやりとした。
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