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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第31章

第561回

 土曜日。サント=ヴェロニック校のブリュメール18日である。
 その日、パトリックは外出を許された。サン=ジェルマン校のオーケストラ顧問ジルベール=シャルニーが、パトリックと付き添いの生徒たちを釣りに誘ったのである。ジルベール=シャルニーがいるのなら、とイアサント=クチュリエが口添えをしたこともあり、ドクトゥール=アースは渋々外出を許可した。しかし、医師は、彼らが出かける前にシャルロットを呼び、パトリックには何があっても絶対に無理をさせないこと、ときつく念を押した。
 3人の少年たちには、シャルニーは恐ろしい存在に見えた。彼は、見かけはとても恐そうだった。彼は、指導者としての貫禄を身につけていた。顔つきも、彼の厳しさをよく表していた。何よりも一見ぶっきらぼうに見える態度が、彼らの恐怖をあおり立てた。しかし、シャルロットが彼に見せる親しみのこもった様子、そして、彼がシャルロットに見せる様子を見ているうちに、彼らも警戒を解いた。
 彼は、少年を一人連れてきていた。シャルロットは少年を知っていた。オーケストラのコンサートマスターをしていた少年だ。マルセル=ティボーデは、サント=ヴェロニック校の数え方で言うと2年生にあたり、まもなく4人の少年はうち解けあって話すようになっていた。
 車は5人乗りだったが、シャルロットも乗り込んだので6人になっていた。それで、シャルニーはシャルロットを助手席にのせ、4人の少年を後ろに押し込んだ。釣りの荷物を置くスペースがなくなってしまったので、シャルロットが釣りの道具を抱え込むことになった。
「サント=ヴェロニック校では、今日の放課後、クーデターが起きる予定なんです」シャルロットがジルベール=シャルニーに向かって突然こう言った。
「何、クーデターだって?」シャルニーはハンドルを持ったまま笑い出した。シャルロットの話が大げさに聞こえたのである。
「ええ、今日は、ブリュメール18日なんです」シャルロットは真面目な顔で続けた。
「ブリュメール18日?」マルセル=ティボーデが口をはさんだ。「・・・ええっと、それは、確かナポレオンのクーデターだったよね?」
「そうです」フランソワ=ジュメールが言った。
「でも、なぜクーデターなんか?」マルセルは怪訝そうな顔でフランソワに訪ねた。
「ぼくたちは、指導者が嫌いなんですよ」パトリックが簡単に説明した。
「じゃ、オーケストラを辞めたら?」マルセルは簡単そうに言った。
「サント=ヴェロニック校じゃ、それが許されないんです」フランソワが答えた。
 マルセルは怪訝そうな顔をした。サン=ジェルマン校では、オーケストラに入るのは名誉なこととされるが、入ることを強制されてはいない。
「・・・で、クーデターね。思い切ったことをするんだね、きみたちは」シャルニーは恐ろしそうに言った。
 セーヌ川に着くまで、誰も発言するものはなかった。
 川に着くと、5人の男性たちは、それぞれ釣りの準備を始めた。シャルロットは見ているだけにするつもりだった。釣りに興味がなかったこともあるが、ドクトゥール=アースからパトリックを監視するように頼まれていたので、パトリックから目を離したくなかったのだ。
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