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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第31章

第563回

 同じ頃、ソサイエティ=ホールには、ほとんど全校生が集まっていた。知らない人が見ると、コンサート前の雰囲気だった。ソサイエティの生徒たちは、ステージの上で自分たちの座席に着いていた。そして、客席にいた生徒たちは、指揮者が台に乗り、演奏が始まるのを待っているかのようにステージを見つめていた。ただ、この日は、コンサートが始まるのを皆が待っていたのではなかった。
 ラザール=ドランドは、指揮台の方へと歩いたが、客席からは拍手ではなく罵声が上がった。
 ドランドは、客席の方を見た。「何の真似だ?」
 ホールは、静まりかえった。ドランドは、客席に背を向け、指揮台に昇った。
 そのとき、コンサートマスターが立ちあがった。「あなたは、今、この時から、ソサイエティの指導者ではありません」
「えっ、なんだって・・・?」ドランドはコンサートマスターを見つめた。
 コルネリウスは、指揮台の上にいたドランドと目を合わせた。二人の目の高さはほとんど同じだった。
「ぼくたちは、これからは、あなたの言うことを聞かないと言っているんです」コルネリウスが言った。
「リコールかい? 残念ながら、ソサイエティにはそんな規定はなかった」
「サン=ティレールが新しい指揮者を決めていても?」コルネリウスは、いつもの皮肉めいたほほえみを浮かべた。彼の冷たい表情は、こんなときには効果的だった。ラザール=ドランドは、目に見えてうろたえていた。
「・・・ばかなことを言うものじゃない」彼は、体勢を立て直そうとした。
「あなたが知らないはずないですよね? 指揮者に無断で指揮台に上がったものは、追放になるんでしたよね? あなたは、2週間前、何も知らなかったシャルロット=チャルトルィスカを追い出しましたね。今日は、あなたの番です」アグレスールが不吉な口調で言った。
 誰からともなく、客席からステージに生徒たちが殺到した。
「やめろ! 暴力は使わない約束だったじゃないか! みんな、席に着くんだ!」アグレスールは客席に向かって大きな声で叫んだ。しかし、彼の叫びはかき消されていた。彼自身も、突然後ろから誰かに殴られて倒れた。
 ラザール=ドランドは、混乱のさなか、ホールを抜け出した。生徒たちは、もみくちゃになりながら、彼の姿を求めてステージの上を歩き回っていた。
「みんな、やめなさい!」アルフレッド=ド=グーロワールが叫んだ。
 その調子に、ホールは一瞬静まりかえった。
「何を言っている、裏切り者!」誰かが叫んだ。そして、ホール内はまたハチの巣をつついたような騒ぎになった。
「やめなさい!」今度の声は、ド=ラグランジュ校長だった。
 場内は、今度こそ静かになった。
 校長は、その場で全員にいった。「みんな、席に着きなさい、いますぐに!」
 生徒たちは、それぞれ座席に戻り始めた。そのとき、ステージから女の子の叫び声がした。
「大変、アグレスールが!」その声は、すぐにすすり泣きに変わった。アーデルハイト=バウムガルトナーと、プレザンス=ベルリオーズの二人が、彼を抱き起こした。アグレスールは血まみれになって横たわっていた。
「アグレスールが死んじゃう!アーデルハイトは、そう言うなり激しく泣き出した。
「ドクトゥール=ワッセルマンは?」プレザンスが言った。
 入り口から声がした。「ここにいる!」
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