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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第32章

第584回

 シャルロットははっとした。
「フランショーム一族は、そんなにかたき役が似合うのでしょうか?」ダルベールは悲しそうに続けた。
 そのときになって、シャルロットは、アンブロワーズ=ダルベールがフランショーム一族なのではないかと初めて思った。そういえば、彼も赤毛だった。ほかのフランショーム一族の誰とも似ていないので、今まで気がつかなかったのであるが・・・?
「・・・違うのよ、ドクトゥール=ダルベール。わたしは、ドンニィが好きなのよ」シャルロットは、気づかないうちにそう言っていた。「うまく説明できないんだけど、これは争いじゃなくて、仲直りの儀式なのよ」
「仲直りの儀式?」ダルベールが繰り返した。
「ええ。だから、どうしてもコンクールには出なければならないの。どうしても彼に勝たなくてはならないの。わかって」シャルロットは訴えた。
 マルローは、《どうするの?》というようにダルベールを見た。
「とにかく、ドクター=チームに診てもらいましょう」ダルベールが言った。そして、彼は部屋から出て行った。
 マルローはシャルロットの方を見た。
「・・・あなたは、ちっとも変わっていませんね、ロッティさま。あなたには、厳しい父親が必要です。でも、ここには、誰も、その代わりができる人がいない。このままじゃ、あなたは不幸になりますよ」
「心配して下さってありがとう、ドクトゥール=マルロー。でも、あなたこそ、どうして自分の娘を持たなかったんですか?」
「わたしは、学問と結婚したのです」マルローは真面目に答えた。「でも、アンブロワーズは違います。彼は・・・」
 シャルロットは、マルローを不思議そうに見つめていた。彼がそこまで言ったとき、ダルベールが戻ってきたので、かの女は続きを聞き損ねてしまった。
 ダルベールは、4人の医者を連れてきた。
 研究所には、昔のクリストファー=テニスンの弟子たちを中心に作られた<ドクター=チーム>と呼ばれるグループが存在した。その代表は、ロビン=マクドナルドというイギリス系フランス人の内科医だった。マクドナルドは3人の医者を連れてきた。そして、4人はシャルロットの手を診察した。彼らもマルローと同じ結論を出した。使わなければよくなる、と。
 シャルロットは、マクドナルド医師から痛み止めの薬を処方してもらい、次の木曜日の診察の約束をしたあとで<きづたの家>をあとにした。
 ダルベールはシャルロットのあとを追った。彼は門の手前でかの女に追いついた。
「・・・どうしてもあなたの決心が固いのなら、ぼくがコンクールについて行きます」
 シャルロットは彼を見上げた。「あなたがついてきたとして、どうしようというの?」
「ぼくは、あなたの味方です。もし必要なら、痛み止めの注射をしてでも、あなたを勝たせたいと思います」
「あなたは医者じゃないわ。そんなことをしていいはずないわ」シャルロットが言った。
「ええ、ぼくは、ただの医学生です。でも、ドクトゥール=マクドナルドのところで見習いをしています。注射くらいなら、何度もしたことがあります---もちろん、ドクトゥール=マクドナルドの立ち会いがあるところで、ですけどね」
「でも、今度は、そういうわけにはいかないんでしょう!」シャルロットはびっくりして言い返した。
「だから、必要なら、と言っているんです」ダルベールはほほえんだ。「そんなことにはならないと思いますけどね」
「ありがとう、ドクトゥール=ダルベール。その件は、来週、ドクトゥール=マルローにも相談してみるわ」シャルロットが言った。「注射の件は冗談としても、あなたの付き添いがあれば、ドクトゥール=マルローを説得しやすくなると思うわ」
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