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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第3章

第58回

 練習が終わった後、クラリスとゴーティエは馬に乗りに出かけた。
 ゴーティエは、ロベール=フランショームの話を聞き出すのが目的で乗馬に誘ったのであるが、なかなか聞き出しかねていた。一方、クラリスの方は、単に気分転換がしたかったのであった。思いがけないところでロベールに出会ったことで、かの女はかなり動揺していたのである。
 こうして、二人とも黙ったまま馬を走らせていたのであった。
 屋敷に戻る途中の生け垣のところに、ロベールがぼんやりと立っていた。
 クラリスは、思わず馬を止めた。
「・・・こんばんは、ロビー」
 ロベールは驚いて彼らを見た。「やあ、こんばんは」
 二人はそのまま厩舎に向かおうとしたのだが、ロベールは呼び止めた。
「クラリス、話があるんだけど、いい?」
 ゴーティエはクラリスの方を見た。
 クラリスは、何も言わなかった。
 ゴーティエは二人を見た。何となく、自分が邪魔者に思えてきた。
「・・・それじゃ、馬を返してくるよ」ゴーティエはそう言うと、クラリスが乗っていた馬のたずなを受け取った。
 彼は、二頭の馬を連れてその場を去った。
 クラリスは、ゴーティエの後ろ姿を見つめていた。
「クラリス、また会えたことをうれしく思います。わたしたちは、運命から見放されてはいないんですね」ロベールが言った。「わたしたちは、『ただの通りすがりの人』じゃなかったんです。友達になる運命だったんです」
「・・・あなたは、そんなことを言うために、ここに10時までいようとしたの?」
「練習が終わって、ここに来ました。帰りたくなかったので、こうしていたんですが・・・」
「練習が終わって、って・・・5時からずっと・・・?」
 彼は、真っ赤になった。
「どうして? わたしが来ないって考えなかったの? わたしは、来るつもりなんかなかったのよ」クラリスが重ねていった。
「いいえ、あなたは、ここに来たではありませんか。来るはずだって信じていました。これも運命だってね」
 クラリスは苦笑した。「あなたにかかると、何でも運命になってしまいそうね。それじゃ、わたしが誰かわからないのも、きっと運命ね。わたしには過去がないわ。でも、それも運命なのかしら。あなたなら、たぶんそう言うでしょうね」
「わたしをばかにするんですね」ロベールはむっとした。
「そんなつもりはないわ」クラリスは真面目な顔をした。
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