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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第33章

第611回

 男性は、シャルロットを見ると、びっくりしたような顔をして、一歩後退した。
「・・・ロッティ・・・?」男はかすれたような声で、やっと口を開いた。「・・・シュリー、生きていたんだね?」
「・・・ペール=トニィ?」シャルロットもやっとのことで声が出た。
「ああ。幽霊じゃないよ」ドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリーは、シャルロットのところに駆け寄って抱きしめた。
「・・・すてきなクリスマス=プレゼントだわ」シャルロットがそっとつぶやいた。
 そのとき、ドアが急に開いた。
「・・・ドクトゥール・・・すみません、ここにいらっしゃると知っていれば、ノックをしたのですが・・・」マクシミリアン=シュミットがすまなそうに言った。「あの・・・不審な子どもが入ってきたそうです。今、探させているところです。警備が行き届かなかったことをお許し下さい・・・」
 彼は、頭を下げたあと、部屋の状況を見て、思わず口をあんぐり開けた。「・・・まさか、シュリーお嬢さま・・・?」
 ドクトゥールはシャルロットを放し、大きな声で笑い出した。「シュミットくん、かくれんぼは終わったようだ。ミュラーユリュードに帰ることにするか」
「・・・でも、大旦那さまは・・・?」
 ドクトゥールはほほえんだ。「わたしから、手紙を書いておくよ。さあ、きみはどうする、ここに残るかね、それとも、ミュラーユリュードがいいかい?」
 マクシミリアン=シュミットの顔に、ゆっくりと笑みが広がっていった。「かくれんぼは、終わったんです」
「こんにちは、シュミットさん」シャルロットが会釈した。「こんなかっこうなので、そばにいって握手しなくても許して下さる?」
 シュミットは、驚いたようにシャルロットの足元の松葉杖を見た。「・・・いいえ、お嬢さま。あなたは、かくれんぼができるくらいお元気です」
 シャルロットは、ゆっくりと杖なしでシュミットのところまで行った。「お久しぶりです、シュミットさん。ごあいさつ抜きで上がり込んで、許して下さるかしら?」
「あいかわらず、お行儀が悪いですね、シュリーさま」執事は、差し出された手を握りかえした。
「本当に、いくつになってもおてんばだね、シュリー」ドクトゥールの目に涙がたまった。
「そんなことないわ、今日だけよ」シャルロットはほほえもうとした。しかし、目の前にいる二人の男性の目に涙がたまっているのを見ているうちに、自分も泣いていた。
「何の用でここまで来たのかね?」ドクトゥールが訊ねた。
 シャルロットは、もう一度ほほえもうとしていた。「裏庭の大きな木を見に来たの」
 ドクトゥールは不思議そうな顔をした。そして、こう言った。「ペンダントを取りに? きみは、あのペンダントを受け取る資格はない」
「・・・わたしが、シャルロット=チャルトルィスカだから?」シャルロットは首をかしげた。
 ドクトゥールは、その動作を、懐かしそうに見つめた。きっと、小さい頃のクラリスは、こんな女の子だったに違いない。
「・・・違う。クラリスと約束したんだ。きみが16歳になるまでは渡さない、ってね」そして、彼はほほえんだ。「それにしても、シャルロット=チャルトルィスカだなんて! きみは、ポーランドのお姫さまだったんだね?」
「ペール=トニィ・・・お願い・・・もうわたしを一人にしないで!」シャルロットはそう言うと、ドクトゥールにもう一度抱きついた。
 ドクトゥールは、かの女をきつく抱きしめた。
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