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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第4章

第61回

 落馬騒ぎのさなか、馬の持ち主である少年がやってきた。
 クラリスは、涙を拭いて立ちあがり、少年に事情を説明し、謝罪した。
「謝ることなんかありませんよ」少年が優しい口調で言った。「あの馬に殺されなくて、本当によかった」
 クラリスは、びっくりしたように少年を見つめた。
「ぼくの名前は、ルイ=フィリップ=ド=ルージュヴィルといいます。ヴィーヴ・・・ジュヌヴィエーヴ=ド=ティエ=ゴーロワの友人です」少年は丁寧な口調で自己紹介した。
「わたしは・・・」クラリスが言いかけると、少年はほほえんだ。
「あなたは、クラリス=ド=ヴェルモン。作曲家なんですってね。噂は、リネットから聞いています」
「リネット・・・アレクサンドリーヌから・・・?」クラリスはびっくりした。
「だから、あなたのことは、ずっと昔から知っているような気がしていました」少年が続けた。「どうか、フィルと呼んでください。みんなそう呼びます」
 クラリスは、まだ驚きのあまり口がきけない状態だった。
「フォンテーヌブローのことも、心配いりません。あの馬は、ぼく以外の人が乗ると暴れる馬なんです」少年が続けた。「これまで、いったい何人があの馬の犠牲になったことでしょう。怪我はありませんでしたか?」
 クラリスは首を横に振った。
「・・・ですが、あなたは、怪我をなさっている」少年はエマニュエルに言った。
 エマニュエルは、軽く手を振った。「たいしたこと、ありませんよ」
 クラリスは、エマニュエルの方を見た。ショックを受けた表情であった。
「大丈夫、たいした怪我じゃありません」エマニュエルはクラリスの方を見て、ほほえみながら言った。「そんなに心配しないで、クラリス」
「・・・でも、手当しないと・・・」クラリスは、やっと言った。「ごめんなさい、エマニュエル。わたしのせいで、こんなことになってしまって・・・」
 エマニュエルは、<大丈夫>というようにほほえんだ。「いいえ、悪いのはわたしです。あなたを無理に馬に乗せたんですから・・・」
 そう言うと、エマニュエルも少年に謝罪した。
「大丈夫です、あの馬がいなくなったのは、今回が初めてじゃありません。そのうち戻ってきますよ」少年が言った。「ぼくは、ルイ=フィリップ=ド=ルージュヴィルと申します。あなたは、あのときの指揮者の方ですね」
「エマニュエル=ド=サン=メランです」エマニュエルは正式な名前を名乗った。「指揮者としては、エマニュエル=サンフルーリィを名乗っています」
 そして、二人は正式に握手した。
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