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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第35章

第632回

 その日、講堂から外に出た生徒たちの目にとまったのは、もう一つのサント=ヴェロニック賞コンクールである、弦楽器・作曲部門の予選についての新しい掲示物だった。月曜日に本選が行われる弦楽器部門に先立ち、作曲部門の結果が発表になったのである。

<作曲部門 審査結果
 第一位 オルランド=フェティス(1年7組):「オーケストラのためのオード」
 第二位 リシャール=マティス(1年7組):交響詩「ペレアスとメリザンド」
 第三位 オーギュスト=ド=マルティーヌ(3年7組):「ジプシー風組曲第一番」
 第四位 クリストフ=アラン(1年2組):「トゥルバドゥールの主題によるラプソディー第一番」
 第五位 リシャール=ベルク(5年7組):「カノン第6番」

受賞記念コンサートは、2月20日木曜日午後1時より行われる予定である。

なお、弦楽器部門の本選会は、2月10日月曜日午後1時からホールにて行う。
演奏順は次の通りである。

 1 ギュスターヴ=デュ=ベレー(クラスⅡ):チャイコフスキー作曲ヴァイオリン協奏曲ニ長調
 2 ヴォルフガング=ヴェーベルン(1年3組):マティス作曲チェロ協奏曲ロ短調
 3 イジドール=アルノー(2年3組):フェティス作曲チェロ協奏曲ニ短調
 4 アンソニー=クラウス(2年3組):アラン作曲コントラバス協奏曲ハ長調
 5 シャルロット=チャルトルィスカ(2年7組):ブルーム作曲ヴァイオリン協奏曲第一番

伴奏は、ラザール=ドランド指揮オルケストル=スゴンによって行われる。>




「・・・ん? 作曲部門の受賞コンサートか?」掲示板を見たギュンター=ブレンデルがつぶやいた。
 シャルロットは吹き出しそうになった。確かに、作曲部門で1位のオルランド=フェティス、2位のリシャール=マティス、4位のクリストフ=アランという3人の作曲家の卵が友人たちのために作曲したコンチェルトを、3人の演奏家たちが本選で演奏することになっていた。
 それは、こんないきさつから始まった。弦楽器部門に出るクラウスが、ちょうどいいコントラバス協奏曲がないからということで作曲科のアルマン=リヴィエールに依頼しようとした。ところが、リヴィエールは、先生が特定の生徒のために作曲することはサント=ヴェロニック賞コンクールの趣旨にそぐわない、と断わった。そして、リヴィエールは自分の生徒たちに、弦楽器部門で1位になれそうなコンチェルトを作る気がある人はいるか、と訊ねたのである。何人かの生徒がコントラバス協奏曲を作曲した。クラウスは、その中でアランの曲を選んだのである。クラウスに選んでもらえなかった生徒たちのうち、1年7組の二人は、自分のコンチェルトをチェロ用にアレンジした。チェリストグループのヴォルフガングとイジドールは、そうして完成したチェロ協奏曲をくじ引きで1曲ずつもらったのである。
 ギュンターは、シャルロットの方を見た。「ブルームって? この学校の人じゃないよね? ポーランドの作曲家でもないでしょう?」
 シャルロットはうなずいた。「あなたにも知らない作曲家がいるなんて不思議ね、アンシクロペディー」
 ギュンターはちいさな声で「ぼくは何でも知っているわけじゃない」というような言葉をつぶやいた。
 二人の会話を聞いていたサルヴァドール=クートンが言った。
「・・・もしよかったら、その作曲家のこと、話してもらえないかな?」
 シャルロットは振り返った。そして、サルヴァドールがコルネリウスと一緒に立っているのを見て、少し赤くなった。
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