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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第35章

第640回

 同じ頃、2年1組の教室では、フェルディナンド=フェリシアーニが10人の生徒を集めて話をしていた。彼らは、監督が新しい劇のために選んだスタッフたちだった。話題は、4月のミュラーユリュード演劇祭についてであった。彼らの学年が演劇祭に出たことはまだなかったが、4年連続最優秀監督賞になっているフェルディナンドが指導する劇が上演されたら、サント=ヴェロニック校も演劇祭で入賞できるかもしれないのに・・・と言われ続けていた。彼らの学年には、すぐれたスタッフのほかに、毎年のように主演男優賞を取るドニ=フェリーのような人もいるのだ。
 監督が選んだ10人の中心になったのは、もともと監督の下で働いてきた2年7組の人たちだった。監督は、自分のスタッフが学校中で一番優れていることをよく知っていた。しかし、監督は、スタッフの人数を増やした。主に、演出関係のスタッフを強化することにしたのである。2年7組のスタッフたちのうち新しいメンバーに残らなかったのはシャルロットただ一人だけだった。かの女の仕事は終わっていた。優れた台本、優れた音楽・・・それは、すでに完成されてしまっていた。監督は、舞台裏で演奏するメンバーの中心人物をアグレスール=ベルリオーズに変更し、彼に指揮をさせることでオーケストラのメンバーを増やすつもりでいた。
「・・・さて、次は配役にうつる。今回は、オーディションを行わない。役は、すべてこちらで指定する。まず、主役アラン=ドルスタンスは、最優秀主演男優賞のドニ=フェリーで文句はないね?」監督は、自分が考えた構想を話していた。
「フランソワ=ジュメールをはずすの?」クロード=ヴァラースが訊ねた。
「彼をはずす理由は二つある。一つは、彼にはもっとふさわしい役がある。アンドレ=グラボフスキーだ。前回も彼にあの役をさせたかったのだが、彼がオーディションを受けるのを拒んだ」監督が答えた。「二つ目の理由は、主演男優賞受賞者を主役から外す理由が、ひとつも考えられない」
 全員うなずいた。
「同様の理由から、サント=ヴェロニック賞受賞者のコルネリウス=ド=ヴェルクルーズは、マクシム=デュラン役を続けてもらう」監督が言った。
「あれは、当たり役よねえ・・・」最優秀演出家賞をとった2年4組のレオポルディーヌ=アモンが感心したように言った。「サント=ヴェロニック賞は、審査員の全員一致の決定だったそうね」
 監督は真剣な顔でうなずいた。「この3人だけで、この劇の成功は約束されたようなものだ」
 そして、監督は配役を次々と発表していった。彼の考えた配役には、誰一人反対できなかった。それぞれが適役だったからだ。
「・・・そして、アニー=ド=リリーズだが、今回はシャルロット=チャルトルィスカにやってもらおうと思っている」監督は最後にこう言った。
「かの女にお芝居なんかできるの?」レオポルディーヌが心配そうに訊ねた。
「わからない。たぶん、やったことはないだろう。それを考えて、クラスで上演したときは、キャストから外したんだがね・・・」監督が言った。「でも、あの役は、足が不自由な女の子の役だから、かの女でもじゅうぶんにつとまると思う。それに・・・」
 監督は、立ちあがって全員の顔を見た。「かの女は、アニー=ド=リリーズなんだ。マルフェがマクシムであると同じ意味でね。認めてもらえないかい?」
「やってみるだけの価値はあるかもしれない」アグレスール=ベルリオーズが答えた。
 彼らは、新しい配役を、シャルロットの謹慎処分が解ける日に発表することを決め、解散した。
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