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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第4章

第63回

「かの女が、あなたにザレスキー一族の伝説を話したんですね?」
「ええ」クラリスが答えた。「それに、あなたの亡くなったお姉さまのこともうかがいました」
 少年は、ちょっと考えこんだ。
「・・・ド=ルージュヴィル家では、女の子が誕生したとき、メダイを贈る習慣があります」ルイ=フィリップが言った。「姉も、そのメダイを持っていました。かの女の誕生日は、1875年3月5日でした。・・・母を含めて家族全員、あの火事で姉が死んだと思っていました。ですが、あなたは、拾われたときに生年月日を証明するものを身につけていたと言いました。もし、それが、ド=ルージュヴィル家のものと証明できれば、あなたは、ぼくの姉だということになります」
 クラリスは、びっくりして否定しようとした。
「ほんとうに、メダイのことは何も聞いていないのですか?」
「知らないわ。絶対に、わたしじゃない」クラリスが叫んだ。「わたしは、クラリス=ド=ヴェルモン。かわいそうな政治家の娘よ」
 少年は、その優しい目で、まっすぐにクラリスを見つめた。「あなたは、認めたくないんですね。でも、ぼくは調べます。あなたのメダイを探して、ぼくの推理が正しいことを証明します。そうしないと、亡くなった母が気の毒です。かの女は、あなたが生きていることを知らないまま天国へ旅立ちました。きっと、天国で、ぼくのことを応援してくれていると信じます」
 クラリスはうなだれた。
「あなたにとっては、あなたがザレスキー一族でない方が幸せでしょうが---いいえ、ロベール=フランショームにとっては、かしら?---たとえどんな結果になろうと、ぼくは調べなければならないのです」少年はきっぱりと言った。
 クラリスは、彼に背を向けて歩き出した。これ以上、その場にいたいとは思わなかったのである。
 生け垣の所に、ロベール=フランショームが立っていた。
 クラリスは、挨拶だけして立ち去ろうとした。しかし、ロベールが呼び止めた。
「・・・何か、あったの?」
「・・・どうして、そんなことを・・・?」クラリスが逆に訊ねた。
「転んだみたいな格好をしている」ロベールが答えた。
「・・・ええ、ちょっとね」クラリスが返事した。「それより、あなたも早いのね」
「あまり、眠れなくて・・・」彼は、ちいさな声で言った。
「何か、心配事でも・・・?」
 彼は、真面目な口調で言った。「クラリス、あなたに初めて会ってから、まだ3週間なんですね。今でもあなたの目を見ると、わたしはどきっとするんです。あなたの目は、ナターリア=スクロヴァチェフスカの目にそっくりですね。あの<ザレスキー家の目>に」
「まあ・・・」まったく、何と間の悪い話だろうか!
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