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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第4章

第64回

「フランショーム一族には、こういう言い伝えがあるんですよ。『ザレスキー家の女性のブルーの目に気をつけろ。その目を見てしまうと、一生かの女を忘れることができなくなるから・・・』・・・フランショーム一族には、ザレスキー一族の女性に一目惚れしてしまって、その目の魔力のために一生独身を通した人が何人もいるんです。きっと、それは、あなたの目のように美しい目なんでしょうね」
 クラリスは、ロベールに訊ねた。「あなたは、その目を実際に見たことがあるの?」
 ロベールが答えた。「ありませんでした。ですが、今では、ナターリア=スクロヴァチェフスカを知っています。あなたの目は、かの女の目によく似ています。そして、あなたの目の方がずっときれいです」
 クラリスは、皮肉なことを考えていた。もし、ルイ=フィリップ=ド=ルージュヴィルの言うことが本当なら、ロベールが今見ている目は、まさしくザレスキー一族のブルーの目だと言うことになる。
「・・・あなたを愛しています」彼は出し抜けにそう言った。彼は、そう言うなり、真っ赤になった。
 クラリスは、反対に青くなった。
「わたしは、これまでに3回、恋をしたことがあります。でも、それはすべて片思いでした」
「本当かしら?」クラリスが訊ねた。
「本当です。わたしは、『あなたを愛しています』という言葉は、いずれ自分の妻にしたいと思うひとが現われるまで誰にも言わないと決めていたのです。これまでわたしの前に現われたひとたちには、その言葉が似合うとは思えませんでした」
 クラリスは思わず笑い出した。「・・・まあ、勝手な言い分ね!」
 ロベールは真剣な顔のまま続けた。「わたしは、つい3週間前まで、そんな女性に巡り会えるとは信じていませんでした。理想の女性は、簡単に見つかるはずないと信じていました。ところが、3週間前のあの日、わたしの目の前に現われた女性に、わたしは心を奪われてしまったのです」
 クラリスも真剣な顔になった。
「クラリス、わたしは、その言葉をあなたのためにとっておいたのだと気がついたのです。あなたを愛しています。あなただけを愛しています。そして、これから先も、あなた以外の女性を愛することは、決してないでしょう。わたしの愛を拒まないでください」
 クラリスは首を横に振った。「あなたには、わたしなんかふさわしくありません。あなたが探さなくちゃならないのは、別の女性だわ」
「別の女性ですって? とんでもない! あなた以外の誰を探せっていうんです?」ロベールは、いらいらとして歩き回っていたが、急に立ち止まると、真剣に訊ねた。「・・・じゃ、あなたは、わたしのことなんか何とも思っていないんですね?」
 クラリスは、悲しそうに彼を見つめた。「ロビー、わたしは、捨て子なのよ。もし、わたしがザレスキー一族だったとしても、あなたの気持ちが変わらない、って約束できる?・・・いいえ、あなたには無理よね」
 彼は、とっさに言葉につまった。クラリスは、その表情を黙って見つめ、それ以上何も言わずに立ち去ったのであった。
 かの女にはわかっていた。フランショーム一族の当主の息子として生まれた彼には、周囲の反対を押し切って<伝説の敵方の娘>と結婚するだけの気概がないだろう、ということが。そして、今のかの女には、それがなによりもつらかった。
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