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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第1章

第7回

 フランソワーズが驚いたのは、クラリスが放浪生活をしている間ずっと持っていたスケッチブックの中身であった。
 ある日、フランソワーズは、クラリスが持ってきたものを処分しようとした。
 クラリスは、スケッチブックだけは処分するのを拒んだ。そして、しぶしぶ中身を見せたのである。
 中には、五線紙がはさんであった。しかも、手書きの音符が書き込まれている五線紙である。
「・・・誰が書いたの?」フランソワーズが訊ねた。
「ママンです」クラリスが答えた。
「あなたのお母さまが、作曲を?」フランソワーズはビックリした。
「いいえ。曲を作ったのはわたしです。わたしがピアノを弾いて、かの女がそれを書いてくれたんです」
 フランソワーズはうなずいた。確かに、子どもの筆跡ではない。いや、4歳の子が、五線紙に音符など書けるものだろうか?
 かの女は、楽譜を見つめ、さらに驚いた。これが、4歳の子どもの曲だろうか?
 フランソワーズは訊ねた。「ピアノが弾けるのね? ちょっと、何か弾いてくれる?」
 そして、かの女はクラリスをピアノの前に連れて行った。
 クラリスが演奏したのは、まさにフランソワーズが持っているその曲であった。
 フランソワーズは、クラリスが作曲者であることを認めた。
 曲の終わりには、こう書かれていた。『アントワーヌの誕生日に。1879年5月14日。クラリス=ド=ヴェルモン』
「・・・アントワーヌ、って?」フランソワーズが訊ねた。
「・・・わかりません」クラリスが答えた。
 しかし、フランソワーズは知っていた。1879年5月14日。それは、まさしく、代議士ポール=ド=ヴェルモンが焼身自殺を図ったその日であった。
 フランソワーズは、そのスケッチブックを持ったまま、クラリスを連れてメランベルジェの元を訪れた。
 メランベルジェも、その楽譜を見て驚いた。
「・・・すごい、これは本物だ! フラニー、この子を大事に育てなさい」
 この日から、クラリス=ド=ヴェルモンは、セザール=メランベルジェの最年少の弟子となったのである。
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