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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第38章

第683回

 そのとき、コルネリウス=ド=ヴェルクルーズを先頭に、何人かの生徒が現われた。
「もう練習かい、感心なことだ」コルネリウスがいつもの皮肉めいた口調で言った。しかし、その目にはあたたかさが浮かんでいた。「おかえり、プティタンジュ。大変だったね」
 シャルロットは真面目な顔で答えた。「ええ、大変だったわ」
「・・・ごめん。ぼくが余計なことをしてしまったようで・・・」ギュンター=ブレンデルが言った。
 シャルロットは彼の前に進み出た。「いろいろあったわ。でも、終わりよければすべてよし、って言うわ」
 シャルロットは、彼に、第三次予選からのできごとを説明した。それを聞いていた全員が《終わりよければすべてよし》と言った理由がわかった。
「・・・というわけなの。あなたのおかげだわ、アンシクロペディー」
 ギュンターは頭をかいた。「なるほど、《大変だった》ようだね」
 そうしているうちに、関係者が全員そろった。
 監督は、シャルロットと握手してから、全員に向かって言った。
「さあ、これからが正念場だ。みんなで、演劇祭を成功させるんだ!」
 そして、第一幕から練習が始められることになった。
 ステージの上には、最初の登場人物が上がっていた。アラン=ドルスタンスの友人たちである。
 シャルロットは、フランソワ=ジュメールの隣に行った。フランソワは、かの女の姿を見ると、そっぽを向いた。
「・・・アンシャン、わたし、あなたに話があるの・・・」
「ぼくには、ないよ」フランソワが冷たく答えた。
「わたしが悪かったわ。わたしがあなたにしたことは、不当なことでした。許して下さい」シャルロットが言った。
「きみがぼくに何をしたのか、きみは本当にわかっているの?」フランソワが言った。
「わたしは、あなたに不当な疑いをかけたわ」シャルロットが答えた。「でも、あなたは・・・あなたがしたことは・・・」
 シャルロットは口ごもった。フランソワが急に振り返ったからである。彼の目は冷たかった。
「本気でそう思っているの?」
「許してくれるつもりがないのなら、せめて、あわれんで欲しいんです」
 フランソワは怒っていた。「なぜ? 何のためにあわれみが必要なんだ?」
 シャルロットはうつむいた。
「ぼくは、今度のことがなかったとしても、きっとマルフェを殴っていた。いつか、彼を殴って降伏させたいと思っていた。なぜなら、ぼくは、彼が嫌いだからだ。その理由は・・・」
 シャルロットは驚いて顔を上げた。かの女の目には涙がたまっていた。
 フランソワは、かの女の目を見ると、その先を続けることができなかった。それで、彼はこう言った。「・・・それでも、きみは、ぼくに謝ろうって言うの?」
「ええ」
「どうして?」
「わたしたち、友達だったわね? これからもずっと友達でいて欲しいのよ」シャルロットはすがりつきそうな調子で言った。
《友達で・・・?》フランソワは心の中でため息をついた。彼は首を横に振った。《・・・そう、それこそが、ぼくが彼を殴った理由だ。きみは、彼を愛している。だが、ぼくは、きみの友人にしかなれない。だから、ぼくは彼が嫌いだったんだ!》
「・・・できないよ、そんなこと・・・」フランソワがつぶやいた。
 シャルロットのほおを涙が伝っていった。
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