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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第39章

第697回

 その翌日の朝食後、ヴィルヘルミーネ=フォン=シュヴァルツベルクは、シャルロットが食事に来なかったことをマダム=ベルマンに報告した。マダム=ベルマンは、連絡を受けるとすぐにシャルロットの部屋に顔を出し、かの女の状態を確認した後、ドクトゥール=ワッセルマンを呼びに行かせた。ドクトゥール=ワッセルマンは、診察後、ドクトゥール=マルローに連絡した。
「・・・きのう、ピアノを弾いたんですって? まだ、そんな無理をしていい時じゃないのに。コンクールのことを考えたら、今はまだ我慢するときなのです。いいですね?」ドクトゥール=マルローは厳しい口調で言った。
 シャルロットはうなずいた。
「体を大切にして、決して無理はしないこと。これ以上悪くなったら、コンクールには出しません。いいですね?」
「でも、ドクトゥール・・・」
「いいですね?」ドクトゥール=マルローは、かの女をにらみつけるようにしながら言った。
 シャルロットは、仕方なく答えた。「・・・わかりました」
「今日は、このまま寝かせておいて下さい。できるだけ部屋を暖めて下さい。かの女には、絶対安静が必要なんです。これ以上ひどくなるようでしたら、研究所につれて帰ります。今日のところは、薬を飲ませて様子を見て下さい、ドクトゥール=ワッセルマン」
「わかりました」ドクトゥール=ワッセルマンが答えた。「付き添いは必要ですか?」
「一人でいても大丈夫ですが、ときどき様子を見て下さい」ドクトゥール=マルローが言った。「くれぐれも、あたたかくして寝かせて下さい」
 マダム=ベルマンが言った。「お昼には、何か温かい食べ物を持ってきます」
「ありがとうございます、マダム=ベルマン」シャルロットが言った。
 こうして、シャルロットは、その日一日自室で寝ていた。
 授業中は、修道女たちが交代で様子を見に来た。放課後になると、隣の部屋のバルバラとヴィルヘルミーネがつきそった。
 夕食前、帰宅する前にドクトゥール=ワッセルマンが様子を見に来た頃には、シャルロットの熱が下がっていた。彼は、シャルロットの様態が安定してきたと見て、マダム=ベルマンに、時々様子を見て欲しいと伝言して帰っていった。かの女は、門限の見回り時間までかの女の部屋で過ごした。
 最後の見回りが終わり、マダム=ベルマンは自室に戻った。
 かの女は、日誌にその日のできごとを記録していた。そのとき、突然部屋がノックされる音がした。
 門限後、部屋から出ることは禁止されている。少なくも、公式には。だから、かの女の部屋に来る人は普通は誰もいない。ただ、この日は、シャルロットの具合が悪くなったという報告が入る可能性がある。マダム=ベルマンは、自分でドアを開けた。
 立っていたのは、一人の修道女だった。かの女は、マダム=ベルマンに一通の手紙を手渡した。マダム=ベルマンは、それを読むなり、真っ青になった。
「案内します、スール=テレーズ」マダム=ベルマンはそう言うと、修道女を連れてシャルロットの部屋に行った。
 部屋をノックしても、返事はなかった。マダム=ベルマンは、ドアノブをまわした。シャルロットが病気になって以来、鍵はかけていなかったのである。
 寝室のドアをノックし、二人は中に入った。
 人が入ってくる気配で、シャルロットは目を開けた。
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