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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第39章

第698回

「マドモワゼル=シャルロット=チャルトルィスカ」マダム=ベルマンが声をかけた。「サン=ティレール先生の命令で、あなたをここから連れて行かなければなりません。着替えをして、スール=テレーズの指示に従って下さい」
 そう言ったマダム=ベルマンの顔は真っ青だった。
 シャルロットは、マダム=ベルマンが動揺しているのを見つめた。シャルロット自身も青くなってきた。
「どこへ行くのですか?」
「地下牢です」スール=テレーズが答えた。
「どうして、そんなところへ?」シャルロットはびっくりして訊ねた。
「あなたには、本当に心当たりがないのですか?」スール=テレーズは、澄み切った目でシャルロットを見つめた。
 シャルロットは修道女のはしばみ色の目を見つめたまま答えた。「わたしは、ずっとここで寝ていました。悪いことをする暇なんかありませんわ」
 マダム=ベルマンがうなずいた。「ええ、そのとおりです」
「着替えをしていらっしゃい。5分だけ待ちましょう」スール=テレーズが言った。そして、心配そうに付け加えた。「あなたは、具合が悪そうだから、なるべくあたたかい服装でいらっしゃいな」
 シャルロットはゆっくり起きあがった。
「あなたは無実なんだから、何も心配はいらないわ」マダム=ベルマンが言った。「ただ、覚えておいてね。地下牢から無事に出られた女の子は、これまで一人もいなかったの。あなたの容疑は、それだけ深刻だということよ」
 そう言うと、かの女は手を差しだした。「歩ける?」
 シャルロットはうなずいた。「ええ、一人で大丈夫です」
 かの女が立ちあがると、二人の女性はかの女の着替えの邪魔をしないよう、隣の部屋に移動した。
 シャルロットは、ベッドを整え、ちいさなテーブルの上にあった紙にポーランド語でこう書いた。

クラスのみなさん、わたしは、何も悪いことはしていません。ですから、何も心配しないで下さい。シャルロット

 シャルロットは着替えを済ませると、マダム=ベルマンとスール=テレーズが待つ隣室に移動した。
 3人は、階段の方へと歩いて行った。
 シャルロットは、隣の部屋のドアが1センチくらい開いているのに気がついた。かの女は、最後に一度だけ振り返った。そして、小さくうなずき、前を向いた。
 かの女たちの姿が見えなくなると、バルバラとヴィルヘルミーネはそっとドアを閉めた。
「何があったのかしら?」バルバラが小声で言った。
「確かに、普通じゃなかったけど・・・」ヴィルヘルミーネが同意した。「あれじゃ、<連行された>みたいだったわ」
「ちょっと、隣の部屋を見てこない?」
「行っても、誰もいないわ」
「でも、何か、ヒントがあるかもしれないわ」バルバラが言った。「わたしは行ってみるわ。お願い、ついてきてちょうだい」 
 ヴィルヘルミーネは仕方なさそうにうなずいた。
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