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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第39章

第699回

 バルバラ=ヴィエニャフスカとヴィルヘルミーネ=フォン=シュヴァルツベルクは、シャルロットの部屋に行った。その部屋は、きちんと片づいているようだった。シャルロットは、ベッドをきちんと直し、薬類をテーブルに残したままそこを去ったようだった。しかし、バルバラは、薬袋の下にちいさなメモを発見した。そして、かの女はそれを読み、ヴィルヘルミーネを呼んだ。
「サン=スーシィ、ちょっと、これを見て!」
 ヴィルヘルミーネは、バルバラの手から紙を受け取った。そして、首を横に振った。「ごめんなさいね、わたし、読めないわ」
 バルバラははっとした。「・・・ああ、そうだったわね。これは、ポーランド語だったわ」
 バルバラは、手紙を受け取りながら言った。「《クラスのみなさん、わたしは、何も悪いことをしていません。ですから心配しないで下さい》こう書いてあるの」
「何も悪いことはしていません?」ヴィルヘルミーネは首をかしげた。「どういうことかしら?」
 それがどういうことかかの女たちにわかったのは、朝食のときであった。マダム=ベルマンが、食事の前に女生徒全員に、シャルロット=チャルトルィスカが地下牢に入れられたという事実を発表したからである。マダム=ベルマンがその事実のみを発表し、理由を言わなかったことで、女生徒たちの不安が広がった。シャルロットの置き手紙のことは、朝食中に女生徒全員の耳に入った。かの女たちは、サン=ティレールがまたシャルロットに嫌がらせをしていると思いこんだ。
 その日、バルバラとヴィルヘルミーネが教室に向かおうとしていたとき、途中で二人の最上級生たちがかの女たちを呼び止めた。
「シャルロット=チャルトルィスカ嬢が捕まったって、本当ですか?」二人連れのうち、背の高い方の少年が訊ねた。
「ええ、どうやら、そうみたいです」バルバラが答えた。
 二人の少年の顔がくもった。
「じゃ、噂は本当だったんだね」
「噂?」バルバラは首をかしげた。
「ぼくは、最上級生のヴィトールド=ザレスキーといいます。彼は、ぼくの元のクラスメートで、友人のローラン=ティルニー」背の高い方の少年---ヴィトールド=ザレスキーが言った。かの女たちは、彼に紹介されなくても彼らのことは知っていた。「ぼくたちは、さっき、噂を聞いたんです。シャルロット=チャルトルィスカ嬢が地下牢にいる、って」
 かの女たちはうなずいた。
「あなたは、詳しいんですね。それなら、どうしてかの女が連れて行かれたかもご存じなんでしょう、ムッシュー=ザレスキー?」ヴィルヘルミーネが訊ねた。
「ええ、だいたいのところはね」ヴィトールドが答えた。
「シャルロットは、何も知りません」バルバラが言った。
「何も? 本当に?」聞いたのはローランの方だった。
「ええ、たぶん」バルバラが言った。
「まさか。容疑くらいは知っているはずだ。そうでなかったら、今ごろ戻ってきているよ。かの女には、黙っていなくちゃならない事情があるんだ」ヴィトールドが言った。
「黙っていなくちゃならない事情?」ヴィルヘルミーネが言った。
 ヴィトールドはうなずいた。
「教えて下さい、ムッシュー=ザレスキー、事情って何ですか?」バルバラが言った。
「いや、今はだめです。かの女のためになりませんからね」ヴィトールドがあっさり言った。「でも、一つだけはっきりしたことがあります。かの女の<逮捕>には、ドニ=フェリーが関係しています。彼も、反省室に入れられています。・・・それじゃ、また」
 二人の少年たちは行ってしまった。
 バルバラとヴィルヘルミーネは、今にも倒れそうな様子で教室にたどり着いた。
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