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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第39章

第701回

 シャルロットは、地下牢に連れて行かれた。
 そこは、女子修道院の地下だった。
 丈夫そうに見えるドアは鉄でできていて、やっと顔が出せるくらいのちいさな窓がついていた。そしてその窓には、鉄の格子がついていた。しかし、いかにも牢屋という雰囲気なのはそれだけで、そのドアがなかったら、普通の部屋が並んでいるようにしか見えなかった。中はちいさな部屋で、ベッドと机とトイレしかなかった。机の上にはスタンドがあったが、明かりといえるものはそれだけで、全体に薄暗い感じがした。三方が壁で、飾り気のない壁のただ一つの装飾品といえるのは木の十字架だけであった。
 シャルロットを中まで案内したあとで、マダム=ベルマンは訊ねた。
「本当は、あなたは、何かを隠しているんじゃない?」
 シャルロットは首を横に振った。
「ここは、恐ろしいところなのよ。ここに入って、教室に戻れた女の子は、まだいないのよ。ここは、重い罪を犯したとされるひとが来るところなのよ」マダム=ベルマンは心配そうに言った。「あなたは、何をしたの?」
「わたしが教えて欲しいくらいです」シャルロットはそう言うと、激しく咳き込んだ。
「何か、わたしにできることはないかしら?」マダム=ベルマンが出て行く前に訊ねた。
「できれば、毛布を持ってきていただけないでしょうか?」シャルロットが言った。
 マダム=ベルマンはスール=テレーズと顔を見合わせた。それから、怒ったように言った。「全く、病人をこんなところに入れるなんて、あの人はモンスターだわ!」
 かの女はそう言うと、スール=テレーズに目配せした。修道女はあわてて出て行った。
「誰にも文句は言わせないわ。暖まって、眠りなさい」かの女は優しく言った。「本当に何もしていないのなら、何も心配いらないわ。すぐに誤解は解けると思うわ」
 シャルロットは、ベッドに横たわった。マダム=ベルマンは毛布を掛けるのを手伝った。そうしているうちに、スール=テレーズが暖かそうな毛布を持ってやってきた。
 二人が出て行った後、シャルロットは上半身起きあがった。あたりは真っ暗だった。暗闇に一人取り残されたかの女は、その場で祈りを唱え、もう一度横たわった。
 朝起きたとき、シャルロットのそばにスール=テレーズが付き添っていた。
「目が覚めましたか?」スール=テレーズがほほえんだ。「ひどい熱でうなされていたんです。あとで、ドクトゥール=ワッセルマンに来ていただきましょうね」
「ありがとうございます、マ=スール」シャルロットが言った。かの女は、起きあがる気力もなく、また目を閉じた。
 再度目を開けたとき、枕元にはドクトゥール=ワッセルマンがいた。彼は、マダム=ベルマンと話をしているところだった。
「・・・今は、まだ、体罰を与える状態にないっていうのに」ドクトゥール=ワッセルマンが話していた。「まだ、体が正常じゃない。それなのに、こんな寒いところに、ろくな食べ物も与えられないでいるなんてね。これじゃ、拷問だよ」
「食べ物だけでもよくしてもらいましょう」
「出す方が先です」ドクトゥール=ワッセルマンが言った。
「でも、今、ここから出すわけには生きませんわ。サン=ティレールがいいとは言わないでしょうから。あなたから、彼に言ってもらえますか?」
「ぼくが?」彼は、とんでもない、といわんばかりの口調で言った。
 シャルロットは、二人の会話に口をはさんだ。「・・・あなたも、勇気がない人の一人なんですね」
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