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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第39章

第704回

 その日の昼過ぎ、2年7組の教室に、2年3組と2年7組のほぼ全員とそれぞれの担任であるエマニュエル=ベール、アルフレッド=ド=グーロワールが集まっていた。担任たちは、この事件のあらましをサン=ティレールに聞かされてきたところであった。
「みんな、適当なところに座って話を聞いて欲しい」アルフレッド=ド=グーロワールが教室にいた全員に声をかけた。それから、教室のドアを開けた。「・・・きみたちも、話を聞きたいのなら、静かに聞いて欲しい」
 教室の外には、ドニの友人たちが何人か顔を出していた。さらに、青ざめた顔をしたリュシアン=ワッセルマンの姿もあった。
「サン=ティレールからの一方的な説明によると」ド=グーロワールの悪意ある口調に、7組の生徒は思わず苦笑した。「2年3組のドニ=フェリー、2年7組のシャルロット=チャルトルィスカ両名は、校則第76条及び第77条違反容疑でそれぞれ拘束されている」
「76条と77条、両方か?」ドクトゥール=ワッセルマンが口をはさんだ。
「そうだ」ド=グーロワールが言った。
 教室がざわめいた。
「・・・それは、ドニがシャルロットの部屋に入った、という意味か?」ドクトゥール=ワッセルマンが念を押した。
「そうだ」ド=グーロワールがもう一度返事した。
 ドクトゥール=ワッセルマンは真っ青になった。「そんなことが可能だと思うのか?」
「少なくても、サン=ティレールはそう考えている」ド=グーロワールが言った。「とにかく、彼の考えを説明させてくれないか、リュシアン=マリー=ジョセフ=エスプリ=ワッセルマン?」
 ドクトゥール=ワッセルマンは何か言いかけて、気を悪くしたように黙った。
「・・・ことの発端は、無記名の投書だ」ド=グーロワールが言った。「4月26日の夜9時半過ぎにドニ=フェリーを見た。彼は、女子寮の前の一番大きな木から降りるところだった・・・そういう内容だったそうだ。その木は、まっすぐ登ると・・・」
「・・・3階のプティタンジュの部屋に出る」コルネリウスが言った。
「そのとおり」ド=グーロワールが言った。「いやに詳しいね」
 一瞬だけ皆笑った。
「・・・つまり、ドニがシャルロットのところから9時半過ぎに出てきたと言いたいわけか?」イジドール=アルノーがきつい調子で言った。「いかにもやつらしい汚らしい考えだ」
「それにしても、どうして、こんなにナンセンスな疑いがかけられたんですか?」アグレスール=ベルリオーズが訊ねた。「だって、女子寮にだって点呼があるんでしょう?」
「シャルロットは、風邪をひいて以来、点呼は免除されているの」ヴィルヘルミーネ=フォン=シュヴァルツベルクが言った。「だから、あの日、誰もかの女に会っていないのよ」
「誰も、って、あなたたちも?」エリザベート=ド=ノールマンがヴィルヘルミーネとバルバラ=ヴィエニャフスカに訊ねた。
「ええ、わたしたちもよ」バルバラが答えた。
「あなたたちは、毎日、かの女のところに行っていたじゃないの。どうして、あの日だけ・・・?」エリザベートは絶句した。
 隣室の二人はうなだれた。
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