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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第5章

第86回

 パリのサン=ラザール病院に着くと、クラリスは他の二人と別れてプランス=シャロンの病室に向かった。
 病室の中には、三人の男女がいた。クラリスが病室に入ると、アレクサンドル=ド=ラヴェルダンがいきなりかの女に抱きついた。
「聞いたよ、クラリス。きみが妹だったなんて、とても嬉しいよ!」
 クラリスはびっくりしてアレクサンドルを見つめた。「・・・どうしたの、わたし、あなたの妹だったじゃないの、ずっと・・・?」
 フィルが助け船を出した。「クラリス、アレックスは、あなたの本当のお兄さんだったんですよ。母親違いのね」
 クラリスは驚いた。「母親違い・・・? まさか・・・?」
 フランソワーズ=ド=ラヴェルダンは、前に進み出てクラリスを抱きしめた。
「フランソワーズおばさま、まさか、おばさまが・・・?」
 フランソワーズは赤くなって答えた。「シャロンは、わたしの初恋の人でした。そして・・・」
 フィルがつづけた。「・・・そして、父にとっても、かの女は初恋の人物でした。でも、二人は、引き裂かれたのです・・・」
「わたしの、本当の母によって・・・?」クラリスははっとした。
 フランソワーズは首を横に振った。「違うわ、クラリス。わたしたちが、それを選択したんです」
「でも、あなたは、わたしの母のせいで不幸になったんじゃないの、フランソワーズおばさま?」
 フランソワーズは、クラリスをまっすぐに見つめて答えた。「いいえ。わたしは、幸せでした。わたしが不幸に見えたことがあって、クラリス?」
 クラリスは、首を横に振った。
 フランソワーズはほほえんだ。「・・・あなたが心配するようなことは、何もなかったわ」
「・・・でも、わたしの母の存在は、あなたにとって邪魔だったんじゃないの、フランソワーズおばさま?」クラリスが訊ねた。
 フランソワーズは、ベッドに横たわっている患者をちらっと見た後、首を横に振った。「わたしにとって、確かにステラ夫人は邪魔者だったかもしれないわね。少なくても、この人に振られたばかりの頃はそうだった。恨んだことがないと言ったら嘘になるかもね。でもね、わたしは思ったのよ。わたしが彼らの幸福をねたんだから、彼らの子どもが不幸な目に遭ってしまったんじゃないだろうか。もし、わたしがよこしまな考えを抱かなかったら、彼らの娘があの不幸な火事で命を落とすことなんかなかったんじゃないか・・・。わたしは、あなたたち一家の不幸の原因になってしまったんじゃないか、って、悩んだこともあったわ」
「・・・ごめんなさい」クラリスが思わず言った。
「なぜあやまるの?」フランソワーズが言った。「わたしは、ほっとしているのよ。神様は、わたしを許して下さったんだ、ってはっきりわかったのよ。だって、彼らの子どもは、生きていたのよ。あの子が不幸じゃなかったことは、わたしが一番よく知っているわ」
 クラリスは、思わずフランソワーズを抱きしめた。
「ありがとう、おばさま、本当にありがとう・・・」クラリスは泣きながら言った。
「お礼を言いたいのは、こっちよ」フランソワーズも泣いていた。「あなたのおかげで、わたしは幸せだったわ、クラリス」
 クラリスは、アレクサンドルに言った。
「わたしは、あなたに助けられたのよ、アレックス。あなたが、わたしを妹にしたいと言わなかったら・・・今のわたしはなかった・・・」
 アレクサンドルも泣き笑いした。「・・・だって、きみは本当の妹みたいだった。まさか、本当の妹だなんて考えたこともなかったんだけど・・・でも、本当の妹でよかった・・・」
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