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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第4章

第71回

 案内された部屋には、一人の男性がいた。クラリスは、以前どこかで彼に会ったことがあるような気がしたが、どこで会ったのか思い出せなかった。
 男性の方は、クラリスを懐かしそうに見つめていた。
「・・・なんてステラにそっくりなんだろうか、あなたは!」彼は口を開いた。
 ルイ=フィリップは、彼に言った。
「ぼくの想像通り、間違いなくこのひとでした」そして、こう言った。「パパ、かの女が、マリー=クリスティアーヌ=ド=ルージュヴィル・・・現在の名前は、クラリス=ド=ヴェルモンです」
「はじめまして・・・と言ったらおかしいですわね」クラリスが困ったように言った。「ですが、覚えていないので仕方ありません。クラリス=ド=ヴェルモンです」
 男性は、穏やかな口調で言った。「いや、マリー=クリスティアーヌ=ド=ルージュヴィルでしょう?」
 彼は、そういうなり、涙ぐんだ。ほんのちょっとためらった後、彼はかの女を抱きしめた。
「間違いない、あなたは、わたしの娘だ。わたしの母によく似ている。そして、わたしの妻・・・あなたの母親にそっくりだ」彼はそう言うと、息子の方を見た。「先にここに連れてくれば、証明なんか何もいらなかったろうに・・・」
 息子の方のルイ=フィリップ---フィルは、父親に言った。「いいえ、証明は、かの女のために必要だったんですよ。信じなかったのは、かの女だけです」
「わたしは、ルイ=フィリップ=エルキュール=シャルル=ド=ルージュヴィル」父親の方のルイ=フィリップが言った。「息子がルイ=フィリップ=フランソワ=グザヴィエ=ド=ルージュヴィル。二人ともルイ=フィリップなんで、親しい人たちはわたしをシャロン、彼をフィルと呼んでいる」
 クラリスはうなずいた。
「いきなりパパと言え、と言われても、ぴんとこないだろう。だから、シャロンと呼んで欲しい」彼が続けた。「もちろん、パパと呼びたかったら、それでもかまわんが・・・」
「・・・どっちにしても、困ります」クラリスが正直に言った。「自分に父親がいたということにも、まだ慣れていませんが、父親を愛称で呼ぶ子どもがいるでしょうか?」
「こんなに大きくなった娘をいきなり持った父親には、それでちょうどかもしれない」シャロンが言った。
 クラリスはほほえんだ。それを見た父子は、亡くなったステラ夫人を懐かしんだ。
 そのとき、一人の女性がティーセットを持って現われた。
「ちょうどよかった。一緒にお茶でもいかがかな?」シャロンが言った。
 クラリスはうなずき、女性の方を見た。その表情がこわばった。
「・・・あなたは!・・・」クラリスは、思わず叫んでしまった。「あなたは、リリ=リル・・・ですね?」
 女性の方も、クラリスを見て、思わずティーセットを手から落としかけた。フィルが、かの女の手からティーセットを取った。
「危ないっ!」フィルが叫んだ。「いったい、どうしたというんです?」
 クラリスは、青ざめて女性を見つめていた。
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