シャルロットは学校に行き、男子寮を訪ねた。そして、誰かに面会を求めるのではなく、寮監のエマニュエル=テリエに会い、寮に残っていた2年7組の生徒にフランソワの怪我のことを知らせるように頼んだ。そして、かの女はクラスメートたちには会わずにそこを去った。続いて、ド=グーロワールの部屋を訪ねることにした。しかし、彼は外出中だった。それで、かの女は彼の部屋のドアの下に置き手紙をし、学校から出た。
かの女は、研究員が運転する車に乗った。そのまま研究所に戻ろうとしたが、ふと思い立って<ラ=メーゾン=ブランシュ>に寄り道してもらった。ベルジュール門の横を通ると、そこにちょうどアルフレッド=ド=グーロワールがいた。シャルロットは、車から降り、彼に声をかけた。
ド=グーロワールは挨拶をすると、真面目な顔で言った。
「ちょうどよかった。これから、寮に戻ってきみを訪ねるつもりだった」
「お願いです、一緒に車に乗ってもらえませんか。アンシャンが怪我をして、研究所にいるんです」シャルロットは青い顔で言った。
「怪我?」ド=グーロワールは驚いた。「怪我の具合は? 家族には連絡したの? いったい何があったの?」
シャルロットは、彼の問いにまとめて答えようとした。「実は、パーシュ広場で、彼はパトリックの飛行機に乗ったんです。でも、飛行機が炎上して・・・」
ド=グーロワールは真っ青になった。
「・・・彼は骨折しています。そして、ドクトゥールが、彼を研究所に運んでいきました。<メートル=シャントゥール>には、さっき行きました。フランソワのお父さまと話をしてから、学校に行ったところです。あなたがお留守だったので、置き手紙をして、また研究所に戻ろうとしていました」シャルロットは、できるだけ簡潔に要点を述べた。
「骨折だけなんだね?」
「あとは、軽い怪我だと思います。軽いと言っても、本人にとっては痛いと思いますけど・・・」シャルロットが言った。「車が待っています。一緒に来ていただけますね?」
ド=グーロワールはうなずいた。「わかった。話はそれからだ」
「話?」シャルロットが訊ねた。
「ぼくも、きみに話があると言っただろう?」ド=グーロワールが言った。「まず、研究所に行こう。話は、車の中でもいい。できれば、誰かに聞かれたくはないのだが・・・」
「・・・大丈夫です、研究員たちは、口が堅いですから」シャルロットは運転していた若い研究員のことを考えながら言った。しかし、それは一般論で、かの女は、運転していた若者のことは何も知らなかった。
ド=グーロワールは、車に乗るとき、運転していた研究員に自己紹介した。そして、シャルロットに話があるのだが、耳に入っても聞かなかったことにしてくれるようにと頼んだ。
「大丈夫です、ぼくは、耳が遠いですから」ジルベール=ド=ロシュフォールと名乗る研究員はにやりとして言った。そして、彼は研究所に着くまで一言もしゃべらなかった。
ド=グーロワールとシャルロットは、後部座席に並んで座った。声を潜めて話せば、確かに運転席からは聞こえにくい場所ではあった。
シャルロットは、ド=グーロワールの方を見た。その視線が、ふと胸元に止まった。そして、かの女は顔を上げた。
「・・・これは、以前、1サンティームで手に入れたスカーフだよ」彼は優しい口調で言った。
そして、彼は胸元から黒いスカーフをとり、かの女に手渡した。それは、以前、かの女がル=アーヴルの駅で一人の青年に渡したスカーフだった。かの女はそれを眺め、それから彼に目を移した。間違いない。彼は、あのときの青年だ・・・。
シャルロットは赤くなった。「まあ・・・。どうして今まで話してくださらなかったんですか?」
彼はシャルロットの手からスカーフを受け取った。「自分からは話さないつもりだった。きみが話すのを待っていた。でも、その前に、きみは卒業してしまった」
シャルロットは首を振った。「たぶん、一生気づかなかったでしょう」
「なぜ? ぼくは、そんなに変わった?」
かの女は、研究員が運転する車に乗った。そのまま研究所に戻ろうとしたが、ふと思い立って<ラ=メーゾン=ブランシュ>に寄り道してもらった。ベルジュール門の横を通ると、そこにちょうどアルフレッド=ド=グーロワールがいた。シャルロットは、車から降り、彼に声をかけた。
ド=グーロワールは挨拶をすると、真面目な顔で言った。
「ちょうどよかった。これから、寮に戻ってきみを訪ねるつもりだった」
「お願いです、一緒に車に乗ってもらえませんか。アンシャンが怪我をして、研究所にいるんです」シャルロットは青い顔で言った。
「怪我?」ド=グーロワールは驚いた。「怪我の具合は? 家族には連絡したの? いったい何があったの?」
シャルロットは、彼の問いにまとめて答えようとした。「実は、パーシュ広場で、彼はパトリックの飛行機に乗ったんです。でも、飛行機が炎上して・・・」
ド=グーロワールは真っ青になった。
「・・・彼は骨折しています。そして、ドクトゥールが、彼を研究所に運んでいきました。<メートル=シャントゥール>には、さっき行きました。フランソワのお父さまと話をしてから、学校に行ったところです。あなたがお留守だったので、置き手紙をして、また研究所に戻ろうとしていました」シャルロットは、できるだけ簡潔に要点を述べた。
「骨折だけなんだね?」
「あとは、軽い怪我だと思います。軽いと言っても、本人にとっては痛いと思いますけど・・・」シャルロットが言った。「車が待っています。一緒に来ていただけますね?」
ド=グーロワールはうなずいた。「わかった。話はそれからだ」
「話?」シャルロットが訊ねた。
「ぼくも、きみに話があると言っただろう?」ド=グーロワールが言った。「まず、研究所に行こう。話は、車の中でもいい。できれば、誰かに聞かれたくはないのだが・・・」
「・・・大丈夫です、研究員たちは、口が堅いですから」シャルロットは運転していた若い研究員のことを考えながら言った。しかし、それは一般論で、かの女は、運転していた若者のことは何も知らなかった。
ド=グーロワールは、車に乗るとき、運転していた研究員に自己紹介した。そして、シャルロットに話があるのだが、耳に入っても聞かなかったことにしてくれるようにと頼んだ。
「大丈夫です、ぼくは、耳が遠いですから」ジルベール=ド=ロシュフォールと名乗る研究員はにやりとして言った。そして、彼は研究所に着くまで一言もしゃべらなかった。
ド=グーロワールとシャルロットは、後部座席に並んで座った。声を潜めて話せば、確かに運転席からは聞こえにくい場所ではあった。
シャルロットは、ド=グーロワールの方を見た。その視線が、ふと胸元に止まった。そして、かの女は顔を上げた。
「・・・これは、以前、1サンティームで手に入れたスカーフだよ」彼は優しい口調で言った。
そして、彼は胸元から黒いスカーフをとり、かの女に手渡した。それは、以前、かの女がル=アーヴルの駅で一人の青年に渡したスカーフだった。かの女はそれを眺め、それから彼に目を移した。間違いない。彼は、あのときの青年だ・・・。
シャルロットは赤くなった。「まあ・・・。どうして今まで話してくださらなかったんですか?」
彼はシャルロットの手からスカーフを受け取った。「自分からは話さないつもりだった。きみが話すのを待っていた。でも、その前に、きみは卒業してしまった」
シャルロットは首を振った。「たぶん、一生気づかなかったでしょう」
「なぜ? ぼくは、そんなに変わった?」
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年代記 第一部

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年代記 第二部

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