アンブロワーズ=ダルベールは、友人の到着に驚いた。そして、フランソワの病室に行くまでに事件のことをかいつまんで説明し、彼の病状を話した。
二人が部屋に入ったとき、フランソワはまだ意識を取り戻してはいなかった。
彼に付き添っていたドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリーは、シャルロットを見て意味ありげなまなざしをした。
「・・・フランソワのお父さまのところに行って、事情を説明してきました」シャルロットは挨拶抜きでそう言った。「そして、学校に行って、彼の担任の先生を連れてきました。彼が・・・」
ドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリーは、立ち上がり、ド=グーロワールのもとに歩み寄った。
「ルイ=アントワーヌ=ド=ラ=ブリュショルリーです」彼はにこやかに言った。「あなたは、アルフレッド=ド=グーロワール先生ですね?」
ド=グーロワールは、白衣を着た男が名乗った名前を聞き、度肝を抜かれた。彼は、返事をするのも忘れ、ドクトゥールを見つめた。
「フレディ?」ダルベールは、友人の背中を叩いた。
「・・・あなたは、生きておられたんですね?」ド=グーロワールはやっとのことで口にした。
「悪運だけは強いようで」彼はもう一度ほほえんだ。「その点、わたしの被保護者とそっくりです」
「あら、わたしが助かったのは・・・」シャルロットは思わず抗議しかけた。
そのとき、フランソワの目のあたりが動いた。
「・・・意識が戻りそうですね」ダルベールが言った。
目を開いたフランソワの目に最初に映ったのは、担任のド=グーロワールだった。
「・・・どうしたんですか、モマン=ミュジコー?」フランソワが訊ねた。
「それは、こっちのせりふだ」ド=グーロワールがややぶっきらぼうとも言える調子で言った。「言っておくが、ここは、寮のきみの部屋じゃない」
フランソワは目をぱちくりさせた。「・・・どうやら、病院のようですね?」
そして、彼は起きあがろうとして痛みに顔をしかめた。「・・・ああ、夢ではなかったんですね・・・」
「何の夢を見ていたの?」シャルロットが訊ねた。
「ぼくは、英雄になった」フランソワが言った。「シューザンの飛行機に乗って、空を飛んだ。それから、きみがそばにいた。そして・・・」
フランソワはシャルロットを優しく見つめた。そして、少し赤くなった。「・・・そして・・・」
彼は、その先を言えずに真っ赤になった。彼は、握りしめていたスカーフを布団の中から出した。「きみは、ぼくを勇者と呼んでくれた。これは、勇者の勲章なのだと」
ド=グーロワールは驚いたような表情でフランソワを見つめた。
「ぼくは、まだ、これを持つ資格があるだろうか?」フランソワはシャルロットに訊ねた。「飛行機は、壊れてしまったんでしょう?」
「飛行機は、かなりの部分が燃えてしまったよ」ダルベールが答えた。「ああなっては、修理しても乗れるかどうか・・・」
「ぼくは、二度と空を飛べない」フランソワが言った。「それでも、ぼくは、これを持つ資格があるだろうか?」
シャルロットはうなずいた。「あなたは、シューザンの夢を叶えたのよ。イカルスは飛んだのよ」
それを聞くと、フランソワは涙ぐんだ。
「飛行機が壊れてしまっても、シューザンはきっと天国で満足してあなたを見ているはずよ」シャルロットは優しく言った。「あなたにしかできなかったのよ、アンシャン。ほかの誰にもできなかったのよ。あなたは勇者なのよ。ミュラーユリュードで初めて空を飛んだのは、フランソワ=ジュメールなのよ。あなたは、それを誇りに思うべきだわ」
ド=グーロワールも隣で大きくうなずいた。
二人が部屋に入ったとき、フランソワはまだ意識を取り戻してはいなかった。
彼に付き添っていたドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリーは、シャルロットを見て意味ありげなまなざしをした。
「・・・フランソワのお父さまのところに行って、事情を説明してきました」シャルロットは挨拶抜きでそう言った。「そして、学校に行って、彼の担任の先生を連れてきました。彼が・・・」
ドクトゥール=ド=ラ=ブリュショルリーは、立ち上がり、ド=グーロワールのもとに歩み寄った。
「ルイ=アントワーヌ=ド=ラ=ブリュショルリーです」彼はにこやかに言った。「あなたは、アルフレッド=ド=グーロワール先生ですね?」
ド=グーロワールは、白衣を着た男が名乗った名前を聞き、度肝を抜かれた。彼は、返事をするのも忘れ、ドクトゥールを見つめた。
「フレディ?」ダルベールは、友人の背中を叩いた。
「・・・あなたは、生きておられたんですね?」ド=グーロワールはやっとのことで口にした。
「悪運だけは強いようで」彼はもう一度ほほえんだ。「その点、わたしの被保護者とそっくりです」
「あら、わたしが助かったのは・・・」シャルロットは思わず抗議しかけた。
そのとき、フランソワの目のあたりが動いた。
「・・・意識が戻りそうですね」ダルベールが言った。
目を開いたフランソワの目に最初に映ったのは、担任のド=グーロワールだった。
「・・・どうしたんですか、モマン=ミュジコー?」フランソワが訊ねた。
「それは、こっちのせりふだ」ド=グーロワールがややぶっきらぼうとも言える調子で言った。「言っておくが、ここは、寮のきみの部屋じゃない」
フランソワは目をぱちくりさせた。「・・・どうやら、病院のようですね?」
そして、彼は起きあがろうとして痛みに顔をしかめた。「・・・ああ、夢ではなかったんですね・・・」
「何の夢を見ていたの?」シャルロットが訊ねた。
「ぼくは、英雄になった」フランソワが言った。「シューザンの飛行機に乗って、空を飛んだ。それから、きみがそばにいた。そして・・・」
フランソワはシャルロットを優しく見つめた。そして、少し赤くなった。「・・・そして・・・」
彼は、その先を言えずに真っ赤になった。彼は、握りしめていたスカーフを布団の中から出した。「きみは、ぼくを勇者と呼んでくれた。これは、勇者の勲章なのだと」
ド=グーロワールは驚いたような表情でフランソワを見つめた。
「ぼくは、まだ、これを持つ資格があるだろうか?」フランソワはシャルロットに訊ねた。「飛行機は、壊れてしまったんでしょう?」
「飛行機は、かなりの部分が燃えてしまったよ」ダルベールが答えた。「ああなっては、修理しても乗れるかどうか・・・」
「ぼくは、二度と空を飛べない」フランソワが言った。「それでも、ぼくは、これを持つ資格があるだろうか?」
シャルロットはうなずいた。「あなたは、シューザンの夢を叶えたのよ。イカルスは飛んだのよ」
それを聞くと、フランソワは涙ぐんだ。
「飛行機が壊れてしまっても、シューザンはきっと天国で満足してあなたを見ているはずよ」シャルロットは優しく言った。「あなたにしかできなかったのよ、アンシャン。ほかの誰にもできなかったのよ。あなたは勇者なのよ。ミュラーユリュードで初めて空を飛んだのは、フランソワ=ジュメールなのよ。あなたは、それを誇りに思うべきだわ」
ド=グーロワールも隣で大きくうなずいた。
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