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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第44章

第780回

「もちろん、それでも幸福をつかめないことだってある。運命なんて、そんなものさ」フランソワが言った。「ぼくは、きみがマルフェを愛していることに気がつかなかった。それよりも、彼がきみを愛していることに気づく方が遅かったかな。まるっきりぼくの目はふさがっていたので、彼がきみを愛していることを示す態度を、きみをいじめていると思いこんでしまっていたんだものね。彼は、自分の愛を、まるっきり反対の態度で示していたんだ」
「でも、彼がわたしを愛している、って、どうしてわかったの? わたしには、ずっとわからなかったのに?」シャルロットは首をかしげた。
「本当に、わからなかったの?」
 シャルロットはうなずいた。
「じゃ、どうしてわかったの?」
「ヴィトールド=ザレスキーが教えてくれたの」
「トトが?」フランソワは、意外な名前が出てきて、あぜんとした。
「あの日、わたしはヴィトールドに、ショップがマルフェを愛していると告白したの。わたし、かの女のために彼を諦めようとしているって言ったのよ。ヴィトールドは、本当にそれでいいのか、って聞いたわ。わたし、よくわからなかった・・・。そうしたら、ヴィトールドは、彼が愛しているのはわたしだ、って言ったのよ」
「ショップがマルフェを?」フランソワは、ショックを受けた。
 シャルロットはうなだれた。「ええ。入学して以来、ずっと好きだったんだって・・・。でも、彼には、ずっと好きだったひとがいた・・・。亡くなったフィアンセのことよ。彼は、かの女と約束していたんですって。もし、先にかの女が死んだとしても、絶対にかの女のことは忘れない、と。かの女のことを愛し続ける、と・・・。ショップは、それを知っていたわ。彼にそう言われたこともあるんですって。だから、ショップは、彼を諦めようとしていたんですって。でも、彼が、わたしを<嫌いぬいて>いるのを見て、もしかすると、彼は亡くなったフィアンセのことを忘れることができたんじゃないかと思ったんですって。あのマクシム=デュランの演技がその証拠だ、って・・・」
「違う」フランソワが言った。「きみは、二つの点で間違っている」
 シャルロットはびっくりしたように彼を見つめた。
「マクシム=デュランが見ていたアニー=ド=リリーズは、ショップのことじゃない」フランソワが言った。「彼が、あれだけの名演技ができたのは、アニーが好きだったからだ。そのアニーとは、ほかならぬきみだ」
 シャルロットは悲しそうに首を振った。
「そして、もう一つ。彼は、亡くなったフィアンセのことを忘れてはいない」フランソワは続けた。「彼は、かの女に、何があってもかの女を愛すると誓ったそうだね。そして、その誓いを守り抜いている。なぜならば、彼のフィアンセは、彼の目の前にいるからだ・・・」
 シャルロットはびっくりして彼を見つめた。
「マルフェを手放してはいけないよ、ユーフラジー」フランソワは優しく言った。「彼は、きみの大切なフィアンセだ」
 シャルロットの表情がこわばった。「アンシャン、わたし・・・」
 そのとき、ノックの音がして、ドアの外で声がした。「・・・ぼくだ、入ってもいいかな?」
 フランソワは思わず首を縮めた。「・・・ディスポだ。今、一番会いたくない男だ」
 シャルロットはあきれたように彼を見た。「彼は、あなたが心配だからきてくれたんでしょう? 一番の親友じゃなかったの?」
「彼には、こんな姿、見せたくないんだよ・・・」彼はため息をついた。「入ってもらってもいいかな? 少し休んでくれ、プティタンジュ。きみは、疲れている」
 そして、彼はシャルロットに合図した。シャルロットは、ドアを開け、ウラジーミル=ミチューリンを中に入れ、自分はそこを去った。
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