年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第45章

第809回

「ですが、あなたには、これから話すことを信じてもらいたいんです」シャルロットが言った。「フランショーム氏は、亡くなる間際、あの手紙を誰かに渡そうと考えました。彼が大切にしていた手紙を託する相手は、ただ一人しか考えられません。それは、クラリスとロビンがかなえられなかった夢を託した相手---コルネリウス=ド=ヴェルクルーズです。彼は、甥のコルネリウスに、あの手紙を残しました。コルネリウスは、わたしの同級生です。わたしは、彼からそれを見る機会を得ました」
「そんな仮説、誰が信じるだろうか?」ショーソンが言い返した。
「そう信じてもらわなくては困ります」シャルロットが言った。「ユーフラジーは死んでいるのですから」
 彼は何か言い返そうとした。
「ユーフラジーは事故にあって死んだと、みんな考えています」シャルロットは、話題の方向を少しだけ変えた。「でも、あれは、事故じゃなかったんです。殺人事件です。1907年、わたしは、3回命を狙われました。3度で済んだのは、3回目にわたしが死んだと犯人が思ったからです。もし、わたしが生きていることがわかれば、もう一度狙われることになるでしょう。でも、ごらんの通り、わたしはただの子どもに過ぎません。わたしは、自分で自分が守れる年になるまでは、ユーフラジーに戻りたくないんです。わかっていただけませんか?」
「・・・わかりました。あなたの言うことを信じましょう」彼は、ようやくほほえみを見せた。
「ありがとうございます、ムッシュー=ショーソン」シャルロットもほほえんだ。
「わたしは、<クラコヴィアクのブローニャ>の記事を載せることにしましょう。ポーランドから出てきて、フランスの学校に通いながらピアノコンクールを征したピアニストの、オート=サン=ミシェルでの演奏会の話をね。もちろん、《悲しき歌》の話も書きますよ。同級生との麗しい友情もね」ショーソンはウィンクした。「あなたは、その同級生---いいえ、あなたのフィアンセのことを、愛している」
 シャルロットは真っ赤になった。「まさか、そんなことまで書くつもりじゃないでしょうね?」
「さあ、どうでしょうね」ショーソンはからかいの口調で言った。
 シャルロットはさらに赤くなり、思わず下を向いてしまった。
「・・・このバラの花は、あなたのほおと同じ色ですね」ショーソンは、目の前のピンクのバラを見つめた。
 シャルロットは、顔を上げた。そして、パトリックの最後のバラを見つめた。「まあ・・・。これは、<フェニックス>という名前なんです」
「フェニックス? でも、このバラは、赤くないんですね」
「ええ。でも、これは、特別なバラなんです。このバラを作った人は、6月に亡くなりました。彼は、自分が死んでも、このバラがある限り、自分の名前が消えないだろうということを知っていました。わたしも、そういう人生にあこがれているんです」
「あなたなら、可能だと思うが・・・?」
「わたしは、そうは思いません。わたしは、道ばたに転がっている小さな石に過ぎません」
「だが、この小石は、磨けばダイヤモンドになる石だ」
「だけど、磨かなればただの石よ」
「じゃ、磨きなさい」彼が言った。「あなたは、宝石になれるひとです」
「わかりました。わたしは、磨きをかけるために、ミュラーユリュードを離れます」シャルロットが言った。「成長するために。そして、人生が、いつもここのようなバラの花園ばかりではないことを知るために・・・」
「行きなさい」彼が言った。「そして、大きくなりなさい」
 シャルロットは去っていった。
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