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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第二部」
第45章

第816回

 シャルロットが<きづたの家>に戻ると、執事のマクシミリアン=シュミットが言った。
「いらっしゃいませ、シャルロットお嬢さま。ドクトゥールは来客中ですが、お待ちになりますか?」
 シャルロットは首をかしげた。「お客さま?」
「エマニュエル=サンフルーリィ氏です」
 シャルロットは少し驚いたような顔をした。「ええ、待たせていただくわ。ところで、ポーランドからのお客さまたちは?」
「庭におられます」執事が答えた。
 シャルロットはうなずき、執事について歩き出した。
 そのとき、ドクトゥールとエマニュエルの二人が、ドクトゥールの部屋から出てきた。シャルロットは二人に挨拶した。二人もシャルロットに挨拶を返した。
「すまないが、ポーランドからの客人を客間に案内してもらえないか?」ドクトゥールが執事に言った。
 マクシミリアン=シュミットはうなずき、その場を去った。
 ドクトゥールは、二人を客間に案内した。そして、二人を座らせ、自分も座った。
「きみの複雑な事情は、ドクトゥールから聞いた」エマニュエルが、前置きなしに話し出した。
 シャルロットは黙って頭を下げた。
「わたしには、一つ、解決策がある・・・少なくても、わたしはそう思う」彼が続けた。「あなたは、チャルトルィスカという姓を捨てなければならない。しかし、新しく名乗るべき姓がない。そこで、わたしは、自分の姓をあなたに提供したいと思う」
 シャルロットはびっくりして、思わず立ちあがった。
「どうだろう、シャルロット=ド=サン=メランと名乗ってもらえないだろうか?」
 エマニュエルは動揺したシャルロットに、もう一度座るように促した。
「実は、この案には、ドクトゥールは反対なさっている。しかし、わたしは、これ以上の名案はないと思うのだ」エマニュエルが言った。
 シャルロットは、やっとの事で口を開いた。「・・・あなたは、わたしに、あなたの養女になって欲しいとお望みなんですね?」
「できれば、わたしの本当の娘になってもらいたい」エマニュエルは、シャルロットの目をまっすぐに見つめて答えた。
「どこの誰かもわからないわたしを、娘にしたいと?」シャルロットは思わずそう訊ねた。「どうしてですか?」
 エマニュエルは優しく答えた。「さあ、どうしてだろうね?」
「そんな、荒唐無稽な話」ドクトゥールが苦々しい表情で口をはさんだ。「あなたは、この子を、自分の娘の身代わりにしようとしているだけだ」
 シャルロットは、ドクトゥールの方を見た。そして、エマニュエルに視線を移した。
「あなたには、お嬢さんがいらっしゃったんですね?」シャルロットがエマニュエルに訊ねた。
「生まれてから、3週間しかこの世にいなかった小さな娘がね」エマニュエルが答えた。「その子の名前は、ユーフラジー---ユーフラジー=シャルロット=ステファニー=ド=サン=メランだった」
「ユーフラジー?」シャルロットは驚いて繰り返した。
 エマニュエルはうなずいた。
 シャルロットはその符合に驚いた。そして、それが単なる偶然ではないと思い当たった。
「わたしがユーフラジー=ド=ラ=ブリュショルリーと名乗ったのは、偶然じゃなかったんですね?」かの女は、ドクトゥールの方を向いて訊ねた。
「その名を与えたのは、クラリス=ド=ヴェルモンだった」ドクトゥールが答えた。「クラリスは、ユーフラジー=ド=サン=メランの母親だ」
「かの女は、ご自分の娘さんの名前を、わたしに・・・?」シャルロットは、その話を聞き、ますます動揺した。この二人には、自分が知らない秘密がまだまだあるのだろうか?
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