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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第4章

第76回

 クラリスとフィルはパリから馬車で戻ってきた。
 二人は、自分たちで馬たちを厩舎に連れて行った。
 まだ日中で、ほかの馬たちは放牧されていた。そして、さくごしにロベール=フランショームが馬たちを眺めていた。
「・・・帰ってきたんですね、クラリス」ロベールが言った。「もう戻ってこないかもしれないと思っていました」
 クラリスは首をかしげた。「・・・まあ、どうして?」
 フィルは、白馬を厩舎に繋ぐと、黙ってその場を去っていった。
 ロベールは返事をせずに、クラリスをじっと見つめた。クラリスは、思わず目をそらした。
「クラリス、どうして黙って行ってしまったんですか?」ロベールが訊ねた。
「避けていたのは、あなたのほうじゃなかったかしら?」クラリスは、顔を上げた。
「わたしが? いいえ。わたしは、いつでもここに来ていました」
「あなたに会うのに、ここに来なくちゃいけないなんて知らなかったわ」
 ロベールは真っ赤になった。
 クラリスは、馬たちの方に目を移した。
「どうして、わたしが戻ってこないかもしれないと思ったの?」
 ロベールが答えた。「わたしは、恐いのです」
 クラリスは、ロベールの答えが自分の問いとずれていると思った。そして、自分同様彼も緊張していることに気がついた。
「何が?」クラリスが訊ねた。
「わかりません。でも、恐いのです」
「あなたが何かを恐がるなんて」クラリスが言った。
「・・・意外ですか?」
 クラリスは首を横に振った。「いいえ。わたしも、恐いんです」
「あなたは、何が恐いんですか?」
「あなたを苦しめることが」クラリスが答えた。「わたしは、あなたを愛するまいと思いました。わたしたちが愛することは、正しいことじゃありません」
 ロベールは思わず言い返した。「間違った愛なんかあるの?」
 クラリスはうなずいた。「誰も幸せにならない愛なら、間違いなんじゃないのかしら?」
「誰も幸せにならない愛?」ロベールは繰り返した。
「ええ」クラリスがうなずいた。
 ロベールは思わずほほえんだ。「わたしのメモを読みましたか?」
 クラリスは黙ってうなずいた。
「<愛は何がこようとすべてをゆるし、すべてを信頼し、すべてを希望し、すべてを耐え忍ぶ>・・・わたしは、こう書きました。正しい愛って、そういうものじゃないのかしら?」
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