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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第4章

第77回

「わたしは、正しい愛なんか信じない。ただ、あなたに憎まれたくないだけ」クラリスが言った。
「なぜ、あなたを憎まなくちゃならないの? あなたがとてもきれいなブルーの目をしているから? その目がザレスキー家のブルーの目に似ているから?」ロベールが言った。「わたしは、小さいときから憎しみを教えられて育ちました。ザレスキー一族を愛することは禁じられています。彼らは憎むべき存在だと思いこまされていました。それでも、フランショーム一族には、ザレスキー一族を愛した人たちがいました・・・お話ししたことがありましたよね?」
 クラリスは首を横に振った。
「フランショーム一族にとって、ザレスキー家の女性は、とても魅力的に見えるそうです。その魔力にひっかかった男性は、おそらく5本の指では数えられないでしょう」ロベールが言った。「そして、ことごとく、その恋は破れました。フランショーム一族にとって、ザレスキー一族の女性を愛することは、論外なのです」
「あなたにとっても、そうかしら?」クラリスが訊ねた。
「わかりません、経験がありませんから」ロベールが答えた。
「考えてみて下さい。あなたならどうなんです、もし、ザレスキー一族の女性に恋をしてしまったら・・・?」
 ロベールは真剣な表情で考え込んだ。「そんな仮定は、無意味ですよ。可能性がない話ですからね」
「可能性がない?」
「実現不可能な話です。わたしは、ジョルジェット=フランショームの息子です。次期当主エクトール=フランショームの弟です。自分の立場から言って、自分さえよければいいとは言えません」ロベールが言った。「だから、あきらめるしかないのです。そして、一生かの女のことだけを考えて過ごすことになるでしょう。それ以外、道がありますか?」
「<すべてを耐え忍ぶ・・・>?そうね、あなたなら、そうするしかないでしょうね」クラリスが言った。「だから、わたしはあなたを愛するべきではないのです」
 ロベールは、はっとしてクラリスを見つめた。
「わたしは・・・わたしの本名は、マリー=クリスティアーヌ=ド=ルージュヴィル。フィルがそれを証明してくれたんです」クラリスは続けた。
「まさか!」ロベールが叫んだ。「まさか、あなたが、プランス=シャロンの娘だというの? かの女は、あの火事で焼け死んだ・・・フランショーム一族のフレデリック=ダルベールが、かの女を救出しようとして、一緒に焼け死んだんだ、って聞いています・・・。あの子どもは助からなかったんです!」
「いいえ、あの赤ん坊がわたしです」クラリスが言った。「証拠もあります」
「なぜ、あなたがザレスキー一族でなければならないの!」ロベールは、顔を両手で覆った。「あなたのブルーの目・・・どうして、疑ってみなかったのだ?」
 彼は、苦しそうにそう叫ぶと、屋敷の方に向かって一目散に駆け去っていった。
 クラリスは、その様子を泣きながら見つめた。
 そのとき、かの女の後ろで白い馬がいなないた。
「あなたがここにやってきてから・・・すべてが変わった・・・」クラリスは、フォンテーヌブローのたてがみに顔を埋めて泣き出した。白い馬は、じっとして、クラリスがするがままにしていた。
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