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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第三部」
第48章

第849回

 コリン=レイノルズ(コラン=レイノール)は、サント=ヴェロニック校に戻る前にシャルロットと会い、1年7組(旧2年7組)の生徒たちの近況を報告した。その話を一緒に聞いていたノルベール=ジラールは彼の話に興味を持った。
 1年7組は、この年もサント=ヴェロニック賞コンクール演劇部門で第一位を獲得していた。フェルディナンド=フェリシアーニ監督は、<詩人>クロード=ヴァラースに脚本を一任した。彼は劇の台本を書くのは初めてだった。彼が選んだ作品は、ベネディクト=リュミエールの短編集<ローザンヌ物語>だった。彼も、前年のシャルロットのように二つの作品をアレンジして一つにまとめることを選んだ。こうしてできあがった劇が<アルバ>だった。
 ノルベール=ジラール(ベネディクト=リュミエール)は、自分の作品がどうアレンジされたのかに興味を持ち、コリンに劇のあらすじを訊ねた。
「ほかのクラスの劇だから、うろ覚えなんだけど・・・」コリンはなるべく細かく思い出そうとした。「確か、こんな話だった。1900年代の初め頃、ローザンヌに三人の兄妹が住んでいた。彼らは、ピアノトリオを結成していた。一番上のアンドレがチェロ、二番目のアレクシスがヴァイオリン、一番下の妹のアルバがピアノを演奏した。3人は、ちょうど一つずつ年の差があった」
「・・・<ローザンヌ物語>は、3人兄妹の話じゃなかったはずだが・・・」ノルベールがつぶやいた。「いや、違うな。この話は<アルバ>だ。兄たちは、妹と血のつながりがなかった、そうだね?」
 コリンはうなずいた。「そう。かの女はそれを知らなかったけど、兄たちは知っていた。そして、彼らはかの女を愛していた。しかし、かの女を愛していると打ち明けることは、かの女が自分たちの妹ではないと告白するのと同じことだ。彼らの両親は、かの女が16歳になるまでは本当のことを打ち明けてはいけない、と死ぬ間際に約束させていたんだ。だから、アンドレはアルバの友人のシモーヌが好きだというふりをし、逆にアレクシスは女性には全く興味がないというふりをしていたんだ」
 シャルロットは深刻な顔をして話を聞いていたが、かの女は、監督がどういうキャスティングをしたのかを考えていたのであった。たぶん、アンドレ役はフランソワ=ジュメールだろう。アルバはフロランス=クールゾンかもしれない。だけど、アレクシスは?
「ところで、アレクシスには、飛行機が好きな親友エティエンヌがいた。エティエンヌは、ルー家に出入りしているうちに、アルバにひかれていくんだ」コリンが続けた。「アルバとエティエンヌが仲良くなっていくのを、兄たちは複雑な気持ちで見つめていた。ある日、アンドレはシモーヌと喧嘩した。その喧嘩を偶然耳にしたアルバは、自分が兄たちとは血のつながりがなかったことを知ってしまう。そして、自分はアレクシスを愛していることに気づく。かの女は、自分の気持ちに気がつくと、エティエンヌと別れなければならないと思いこむんだ。ところが、エティエンヌは、別れ話に逆上し、かの女の心変わりの相手の名前を聞き出そうと脅迫する。かの女にナイフを突きつけるエティエンヌの姿を見、アレクシスはエティエンヌにとびかかり、ナイフを奪おうとする。二人がもみ合っているうち、ナイフはエティエンヌの胸に刺さり、エティエンヌは死んでしまう。親友を殺してしまって動揺したアレックスは、そのナイフで自分の胸をさして自殺を図ろうとするんだ。止めようとしたアルバに、彼は自分の気持ちを打ち明ける。その彼に、かの女は自分がずっと彼を愛していたことを打ち明けた。それを聞いたアレクシスは、かの女を殺人犯の妻と呼ばせるわけには行かないと言い、その場で自害する。アルバは、彼の胸からナイフを取り、彼の手に握らせ、その上に身を投げるんだ・・・」
 わかったわ、アレクシス役はドニ=フェリーだわ・・・とシャルロットは思った。でも、彼は、別のクラスだったはずだ。
「・・・うーん・・・」ノルベールはうなり声をあげた。「高校生の劇にしては、ものすごい展開だね」
 シャルロットは思わずふきだした。「あなただって、高校生の頃作ったんでしょう、この作品を?」
「いや、<ローザンヌ物語>は、こんな話ではなかったはずだ」ノルベールが真顔で答えた。
「それで、キャストを覚えているかしら?」シャルロットがコリンに訊ねた。
「うん。アンドレがフランソワ=ジュメール、アレクシスがギュンター=ブレンデル、アルバがフロランス=クールゾンだ。フロランスは、最優秀女優賞を獲得したんだ」コリンが言った。「そうそう、監督も詩人もそれぞれ賞を取ったよ。もちろん、音楽も、舞台衣装賞もだ。そして、彼らは今年もミュラーユリュード演劇祭に出場することになったんだ」
「ミュラーユリュード演劇祭?」ノルベールが訊ねた。
「ええ、ミュラーユリュードのすべての学校の代表と、ミュラーユリュードにある劇のサークルが1年に一度集まって、コンテストをするんです。そして、優秀な団体を表彰するの」シャルロットが言った。「サント=ヴェロニック校の場合、一番優秀な劇を、その学年全体から選ばれたメンバーで上演するのよ」
 そして、シャルロットは顔を輝かせた。「ねえ、あなたの劇を見たくない? 今の1年生の実力はかなりのものよ」
「面白そうだね」ノルベールが答えた。
 そこで、シャルロットは、監督に宛てた手紙を、学校に戻ろうとしていたコリンに持たせたのである。
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