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年代記 ~ブログ小説~ 

「年代記  第一部」
第5章

第85回

「これからどうするんですか? やはり、パリに行くの?」クラリスはそう訊ねた。
「ええ、メランベルジェ校で勉強を続けます。作曲の基礎をついでに勉強したいと思っています。演奏解釈に役に立つと思います」エマニュエルが答えた。
「お元気で」クラリスは握手のために手を差し出した。
 エマニュエルは、両手でその手を握りしめた。そして、ためらいがちにこう言った。
「わたしは、いつまでも待っています、クラリス」
 そして、彼も去っていった。
「・・・あなたは、どうするの、ロビー?」クラリスは、次に控えていたロベール=フランショームに訊ねた。
「サン=ナゼールに帰ります」ロベールが答えた。「そこで、考えてみたいのです。そして、結論が出たら、あなたを探します」
「どんな結論でも?」クラリスが訊ねた。
 ロベールは首を横に振った。「もし、あなたをあきらめなければならないというのが結論だったら、もう二度とあなたの前には姿を見せないつもりです。会えばつらいだけですからね・・・」
「そのときは、手紙をください」クラリスが言った。「わたしがどこにいるとしても、フランソワーズ=ド=ラヴェルダンのところに手紙を出せば、きっとわたしに届くはずですから」
 ロベールは、クラリスの手を取った。「いつか、わたしが言ったことを覚えていますか、クラリス・・・わたしは、自分の妻にしたい人にしか愛していると言わないと決めている、と言ったことを・・・?」
「ええ、覚えているわ」クラリスが答えた。
「わたしは、あなた以外の女性と結婚するつもりはありません。もし、あなたと結婚できなかったら、<ザレスキー一族のブルーの目の犠牲者>がもう一人、両家の歴史に名を連ねることになるでしょう」
 そして、ロベールも行ってしまった。
 クラリスは、目に涙をためてゴーティエたちの方を見た。
「・・・この家って、こんなに大きかったかしら・・・?」
 ジュヌヴィエーヴは、思わずクラリスを抱きしめた。
 そのとき、門の前に一人の女性が現われた。
「・・・クラリス=ド=ヴェルモンさんという方は、こちらにいらっしゃいますか?」女性が訊ねた。「お手紙が、うちに間違って配達されていたんですが・・・」
 クラリスは、手紙を受け取って、女性に礼を言った。
「・・・フィルが、手紙を・・・」クラリスは、ゴーティエたちの前で手紙の封を切った。読み終わった後で、青ざめた顔で手紙をゴーティエに渡した。
 ゴーティエは、その手紙を一読した後ジュヌヴィエーヴに手渡し、こう言った。
「・・・パリに行きましょう、クラリス。確かめなければなりません」
「わたしも行きます。留守番は、ペグだけで十分でしょう」ジュヌヴィエーヴもそう言った。「きっと、リネットだわ、間違いない・・・」
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